【フジテレビ商品研究所 これは優れモノ】「エレモーション・プラス[ゼロ]」

24時間365日、休みなく稼働している情報センター
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  • 安全装置設置済マーク
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  • 三菱電機ビルテクノサービス昇降機保守事業本部・與那覇憲氏

 □三菱電機ビルテクノサービス

 ■エレベーター稼働させながら工事可能に

 東京五輪・パラリンピックを2年後に控え、東京の街が急ピッチで変わろうとしている。地方でも、老朽化した道路や橋などの整備が急がれている。今回の「これは優れモノ」は、生活に欠かせないインフラの一つ、エレベーターの最新事情を取材した。

 「エレベーターの税法上の耐用年数は17年ですが、適切なメンテナンスをしていれば、20~25年は安全にご利用できます」と話すのは、三菱電機ビルテクノサービス昇降機保守事業本部の與那覇(よなは)憲さん(36)。

 ◆大量リニューアル期

 建築ラッシュに沸いたバブル経済の崩壊から四半世紀が過ぎ、その頃に建てられたビルやマンションのエレベーターが、大量リニューアルの時期を迎えている。同社には、ビルオーナーなどから、工事の相談が数多く寄せられているという。

 エレベーターが動く仕組みは、ロープ式と呼ばれているものが主流だ。井戸の仕組みと同じで、人などが乗るカゴと釣合おもりで重量のバランスを取り、建物の屋上に設置された巻上機で上下に動かす。構造がシンプルなため、低層から超高層ビルまで幅広く使われている。

 ロープ式は屋上などに一定規模の機械室を設ける必要があり、高さや日照制限にかかることもあったが、モーターや巻上機などの小型化に成功し、1990年代終わりにはヨーロッパのメーカーが、昇降路の中に機器を設置する方式を開発、日本を含む世界のメーカーが採用していった。

 人が利用するエレベーターは当然、高い安全性が求められ、日々の保守点検のほか、機器の老朽化や最新の安全法令に対応するリニューアルも必要になる。ただ、工事期間中に停止を余儀なくされることから、利便性を考えてためらうビルオーナーも多いという。

 その声に応えたのが、三菱電機ビルテクノサービスが2016年に発表した「エレモーション・プラス[ゼロ]」。老朽化したエレベーターを稼働させながら、工事する新技術だ。

 ◆完全停止させる必要なし

 それまでは、モーターや制御盤、巻上機などを順次交換するために完全停止させなければならず、エレベーターが1台しかない病院やテナントビルでは、リニューアルをためらうケースもあった。

 そこで、同社が三菱電機と共同開発した「ハイブリッド制御盤」は、交換した最新機器と既存の機器を橋渡しする“優れモノ”。これを使うと、機器を交換してもエレベーターを完全停止させる必要がないという。

 朝夕の利用者の多い時間は稼働し、利用者の少ない時間帯に工事を進め、最終的にすべての機器を最新機器に交換する。

 「地味ですが、安全・安心なエレベーターを広めていく光る技術です」。與那覇さんはそう、胸を張った。

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 ≪interview 担当者に聞く≫

 □三菱電機ビルテクノサービス昇降機保守事業本部・與那覇憲氏

 ■リモート点検システム、24時間365日無休で情報把握

 --エレベーターのリニューアルにどう対応しているか

 エレベーターは人を乗せるため、常に安全性が担保されなければならない。近年の大きな地震や事故を背景に、国はエレベーターの安全基準を見直し、所有者や管理者に最新の安全装置の設置を求めており、当社もリニューアルのタイミングで対応している。

 --どんな安全装置か

 特に重要なのは、「戸開走行保護装置」と、「地震時管制運転装置」だ。前者は、エレベーターの扉が開いたままカゴが昇降しようとすると、瞬時にブレーキをかけ、事故を未然に防ぐ。後者は、地震発生時の初期微動(P波)を感知し、本震(S波)がやってくる前に、最寄り階で乗客を降ろし閉じ込めを防ぐ。2009年9月以降に新設されたエレベーターに義務付けられ、利用者から見えるカゴの中に安全装置設置済マークを貼るよう、国土交通省が求めている。

 --地震で休止すると、復旧に時間がかかるケースがある

 地震時管制運転装置が働いてエレベーターが休止すると、技術員が現地を訪問し、安全をチェックしてから運転を再開する。しかし、広範囲にわたってエレベーターが休止した場合は、人手が足らずに復旧に時間がかかってしまう。このため当社では、エレベーターが安全かどうかを自動診断し、問題がなければ30分程度で仮復旧できるサービスを提供し、好評をいただいている。

 --他にどんな安全体制が取られているか

 リニューアルしたエレベーターは、リモート点検システムを利用できる。このシステムは、24時間365日、全国8か所にある情報センターが各エレベーターを無休で点検する。また、情報センターでは、当社の技術員の位置情報を常に把握し、速やかに不具合や災害に対応できるようにしている。

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 ■フジテレビ商品研究所

 「企業」「マスコミ」「消費者」をつなぐ専門家集団として1985年に誕生した「エフシージー総合研究所」内に設けられた研究機関。「美容・健康科学」「IPM(総合的有害生物管理)」「食品料理」「生活科学」の各研究室で暮らしに密着したテーマについて研究している。

 http://www.fcg-r.co.jp/lab/