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 ■未来創造する「オープンな場づくり」の提案

 □マルハン経営企画部部長・森部浩司

 レジャー白書2018年において17年度パチンコ参加人口が発表された。前年の940万人から40万人減って900万人という結果となったが、ホール事業を営むわれわれの実感値としては、このままではパチンコファンの減少はこの先も継続するのではないかと思う。

 ファン減少が加速する中で、よく耳にするのが「原点回帰」という言葉。長きにわたりいわゆるスローガン的に使われることが多く、“大衆娯楽という原理原則に立ち返ろうではないか”というメッセージに聞こえる。原理原則に何ら反論はないが、この“原点回帰”という言葉には違和感がある。原点回帰をうたって具体的アクションを実行してもファンが減るのであれば、この考え方自体が顧客には通用しないことを認識すべきだと思う。この言葉の根底には「古き良き時代に戻ろう」という考え方が読み取れるが、それだと使い古したアイデアしか生まれず、その先にあるアクションも既存の枠を超えることはできない。結果、顧客には全く響かない(顧客不在の)アクションが繰り返されてしまう。

 過去の回帰である限りこの業界に未来はない。過去の延長線上で何ができるかを考え、またパチンコ業界という「箱」の中だけで顧客創造を見いだすことには限界があるのではないか。思い切って過去からも「箱」からも脱却し、できない理由探しではない“オープン”な環境において未来を創造する“場づくり”が必要ではないか。一つ例を挙げるならば、他業界では当たり前のようになったオープンイノベーションのパチンコ業界版の実行。パチンコ業界×ベンチャー企業という形で場を作り、この業界が持つ多くの有形無形の“資産”“資源”について、「箱」の外にいて何のしがらみもない、良い意味での素人の力を活用してみてはどうか。新たな顧客価値を見いだすことができないわれわれには思いもつかないアイデアやイノベーションが生まれ、顧客創造の種となり実となる可能性は十分にある。

 企業同士や業界の垣根を取り払い、サプライチェーン全体のプレーヤーが参画をする場になれば、新たな原理原則の下に、日本の素晴らしい娯楽を顧客に提供できるのではないか。

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【プロフィル】森部浩司

 もりべ・こうじ 1974年生まれ、福岡県育ち。早稲田大学理工学部創造理工修士課程修了。98年マルハン入社。営業店舗勤務を経て社長室、経営企画部で勤務。2015年10月から現職。