【電機新時代】(上)環境激変、得意分野に集中

日立製作所本社が入るビル。競争力を高めるため事業構成の入れ替えを急ぐ
日立製作所本社が入るビル。競争力を高めるため事業構成の入れ替えを急ぐ【拡大】

 ■危機感あおる次世代技術と中国企業

 リーマン・ショックで経営危機に陥った電機業界。苦節10年を経て各社の業績は回復したものの、人工知能(AI)をはじめとする次世代技術の急速な発達と中国企業の台頭で競争環境は激変しつつある。危機感を強める各社は、得意分野に経営資源を集中させ、活路を見いだそうと必死だ。

社長直轄で大改革

 10兆円の会社資産のうち、収益に結びつかない生産設備や土地などは2割-。営業最高益を更新中の日立製作所で、大胆な改革プランの議論が加速している。提唱したのは投融資戦略本部。新たに設立された社長直轄の組織だ。

 これまで事業部門ごとに動いていた買収・売却案件を統括し指揮する役割を担う。トップダウンで筋肉質な会社につくり替えるのが狙いだ。本部長の河村芳彦執行役専務は「競争力を高めるために事業構成の入れ替えを急ぐ」と強調する。

 日立は、リーマン・ショックが引き金となった世界同時不況のあおりを受け、2008年度に当時としては製造業で過去最大の最終赤字を計上。その後、薄型テレビ生産から撤退する一方、鉄道などの社会インフラ事業に経営の軸足を移し、V字回復を果たした。

 他の電機大手も痛みを伴うリストラを断行し、7社の最終損益の黒字の合計額は17年度にリーマン前の水準を10年ぶりに上回った。各社の経営はおおむね堅調だが、安住していては将来の成長は見込めない。

社外視点取り込む

 「会社文化の変革が必要だった」。NECの新野隆社長は今春の異例人事の理由をこう説明する。米ゼネラル・エレクトリック(GE)の日本法人で社長を務めた熊谷昭彦氏を執行役員副社長に招き、業界の話題をさらった。

 外部人材の登用はNECだけではない。パナソニックは、日本マイクロソフト会長だった樋口泰行氏を専務執行役員に起用した。日立の河村氏は三菱商事の執行役員だった。

 社外の冷徹な視点を取り入れなければ、内部の複雑なしがらみを打ち破り、事業売却などの大胆な戦略に打って出るのは難しい。そんな思いは各社に共通し、社外取締役を増やす企業も目立つ。

 ソニーは17年、世界で初めて実用化に成功したリチウムイオン電池事業を村田製作所に売却した。今年3月には、富士通が携帯電話事業を東京が拠点の投資会社ポラリス・キャピタル・グループに譲渡した。目まぐるしく変化する競争環境に対応するため、自社の強みを発揮できない事業は切り売りする動きが相次ぐ。

 かつて「ハゲタカ」と呼ばれた投資会社への抵抗感も経営者の間で徐々に薄れてきた。英投資会社CVCキャピタル・パートナーズ日本法人の赤池敦史社長は「好業績下での攻めの事業再編が増える」と予測する。