【広報エキスパート】アサヒグループHD 国内外社員の一体感醸成に注力


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 □アサヒグループホールディングス 広報部門ゼネラルマネージャー・田中隆之氏

 --ビール業界は転換期を迎えています

 減少傾向に歯止めをかけようと、国内ビール類市場の活性化に取り組んでいますが、厳しい状況です。こうした中で、2016年から17年にかけて、英SABミラーが保有していたイタリア、オランダ、英国のビール事業と、ABインベブの中東欧5カ国の同事業を買収し、グローバル化に大きくかじを切りました。自社ブランドの「スーパードライ」、イタリアの「ペローニ」、チェコの「ピルスナーウルケル」の3ブランドをグローバルプレミアムビールブランドの柱に位置付け、販売を強化しています。

楽しい生活文化創造

 --国内でも買収が続きました

 国内で展開する酒類と飲料、食品の各分野で、事業やブランドを取得しています。01年のニッカウヰスキーに続き、07年に和光堂を完全子会社化し、08年には天野実業の事業を取得しました。その後も10年にハウス食品から「六甲のおいしい水」、カゴメから「六条麦茶」、12年に味の素の100%子会社だった「カルピス」、15年にはワイン販売大手「エノテカ」の事業を取得。ポートフォリオ(商品群)の拡充とともに、強い経営基盤を構築しています。今後、お客さまの期待を超えるおいしさや、楽しい生活文化を創造していきます。

 --事業拡大に伴い、海外の社員比率が増えました

 海外企業の買収によって、アサヒグループの従業員約3.1万人のうち、約60%が外国人になりました。大切なことは、グループの国内外社員の一体感を醸成することです。インターナル広報活動の一環として、グローバルポータルサイトを開設。小路明善社長のメッセージや国内外のグルーブ会社の紹介、国内酒類、飲料の生産拠点と売り上げ状況に加え、日本文化などについて世界各国の従業員に随時、発信しています。

 --広報体制は

 ホールディングスの広報部門は15人です。業務の重複もありますが、社内広報(3人)、社外広報(11人)、ESG&グローバル(3人)の3グループで構成しています。アサヒビール、アサヒ飲料、アサヒグループ食品など各事業会社にも広報担当者がいて、社内広報会議の定期開催や、ニュースリリース作成などの連携強化を図っています。メディア対応は、ホールディングス広報の担当です。ニュースリリースの配信は年平均450本で、酒類関連が4割、飲料3割、食品2割、海外その他が1割。記者会見は年平均15回で、引き続き、グループの企業価値向上に結び付く会見を開いていきたいと思っています。

日本中に勇気・元気を

 --「オリンピック555ミリリットルジョッキ」が話題です

 アサヒビールは、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の「東京2020ゴールドパートナー」です。大会に向け、「スーパードライで、ともに乾杯!」「最高のおもてなしを実践」の2つのテーマを掲げ、日本中に勇気と元気をお届けするさまざまなプロモーションを実施しています。その一つが、「アサヒスーパードライ」のロゴと東京2020オリンピック競技大会のエンブレムを記載した「オリンピック555ミリリットルジョッキ」です。大会開催までに取扱店の拡大を図り、グループのさらなる価値向上を目指していきます。

 --広報の課題は

 国内外の酒類、飲料、食品のブランド力や事業の持続的成長、企業価値の中長期的向上につながるよう、「5W2HYTT」の広報展開に取り組んでいきます。 (エフシージー総合研究所 山本ヒロ子)

                   

【プロフィル】田中隆之

 たなか・たかゆき 1994年立教大経卒、アサヒビール(現アサヒグループホールディングス)入社。岐阜、東京新宿支店などを経て2005年広報部課長。11年アサヒグループホールディングス広報部門報道チームリーダー。14年アサヒビール営業本部営業部担当副部長。17年から現職。