【安西洋之のローカリゼーションマップ】ミラノ市内で開催された、日本に関するパネルディスカッションを見学しているときのこと。
日本とつきあいの深い数人のイタリア人がパネリストとして話している。1人が「日本は先端技術が普及している社会である」と発言した。
「あれっ?」と思った。
街の中に入り込んだロボットや正確な運行の新幹線といった事例をもって「先端技術先進国」と彼は称している。外国人がよく引用する例だが、ぼくにはちょっと一時代前の日本賛美に見えた。
回転寿司店でロボット「ペッパー」が客を迎え、カウンターにあるタッチパネルで寿司をオーダーする風景を切り取って先端技術先進国というなら、そう言いたい気持ちが分からないでもない。
しかしながら、日本の大手銀行のオンラインバンクは特定のOSやブラウザーを推奨し、客とのやりとりは電話に限定されメールも使えない。そして窓口の前には案内する人がおり、それなりの数の人が番号札を持ってソファーに座り、自分が呼ばれるのを待っている。
一方、イタリアの大手銀行のオンラインのインターフェースはずっとスマートになっており、もちろんメール交信も普通に行える。窓口での業務もオンラインやATMで処理ができるものは受け付けないようになってきた。そして来年1月から法人の請求書はすべて電子化が義務付けられる。
イタリアにおけるこうしたデジタル化のうねりを眺めていると、生活の各部分のデジタル化の比較で日本は「先進そうにみえる」が、日本社会全体のデジタル化は「あまり先進そうにみえない」。
デジタル化に遅れた先端技術先進国とはなんだろう?