神奈川発 輝く

お土産生産、「脱他県」の挑戦 鎌倉ビール醸造、地域限定の存在感高める (1/4ページ)

 鎌倉ビール醸造の地下1階には15個のタンクが設置され、酵母が麦汁をビールに変えていく。日本を代表する観光地・神奈川県鎌倉市の名を冠する地ビールは、従業員13人の小さな工場で造られている。

 基本的に市内と、かつて存在した「鎌倉郡」の一部である江の島(神奈川県藤沢市)でのみ、飲むことができる商品だ。代表取締役社長の今村仁右衛門氏(61)は、この地で1918年に創業した酒の小売店の3代目で、97年に父とともに現在の会社を立ち上げた。きっかけは、「鎌倉名物」などと称した土産物を見たことだった。

 他県産の土産に愕然

 「鎌倉のお土産なのに、生産地が他県のものばかりであることに気付き、愕然(がくぜん)とした。お客さんには鎌倉発の商品を楽しんでもらいたい。そう思って、地酒としてビール造りを決意した」(今村社長)

 現在、大手メーカーのほとんどは、発酵温度が低く長時間熟成させる「ラガー」と呼ばれる商品を取り扱っている。品質を均一に、かつ大量生産するのに向いているからだが、対して鎌倉ビールは短期間で発酵させる「エール」タイプを採用している。一度に造れる量は330ミリリットル瓶に換算すると、最大でも4500本。この仕込みを年に約70回繰り返している。

 観光客でごった返すJR鎌倉駅前の「小町通り」でアンケートを取ったり、飲食店で消費者の反応を直接聞いたりしながら、商品の味にはその都度、変化を与えてきたという。「この街にやって来るのは若い女性が圧倒的に多い。そうした方々にビールについて聞くと、みなさん『苦くておいしくない』と言う。ならば、そうでないものを造ろうと」(同)。ときにはかんきつ系の香りがするホップを使うなど、トライを繰り返している。試飲後、多くの人が抱く感想が「フルーティー」だという。

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