講師のホンネ

「人は、居場所があると輝く」 ホストクラブの人材育成の場合

 友人の一人に、ホストクラブの人材育成をしている有川貴士という男性がいる。現役のホストとして現場に立ちながら、9店舗の採用や人材育成を任されている。それだけでなく、最近はライバル店の人材育成や研修まで請け負っている。そのために、大量のビジネス書を読み、世の中の研修に参加するだけでなく、部下にも手応えのあった研修を薦めている。(大谷由里子)

 最初、「ホストっていいかげん…」などと思っていた私は、そんな彼の真摯(しんし)な姿にびっくり。ちょっと、いろいろ尋ねてみたくなった。すると「もともとはいいかげんな人間でしたよ」と笑いながら話をしてくれた。「ホストクラブで働く人間もお客さんも、居場所を求めているんです。だから、僕たちの仕事は、居場所をつくることなんです。そして人は、居場所があると輝くんです」という。

 実際、彼も父親とうまくいかずに家出をし、板前の修業中に友人に誘われてホストになった。ホストを続けられたのは、「お前ならできる」「お前には、才能がある」と、励ましてくれた仲間がいたからだという。「あの時まさに、自分の居場所を見つけられたんです」と熱が入る。

 「居場所」という言葉に興味を持ったので、彼を招いて、「ホストから学ぶ居場所の作り方」という勉強会を開いてみた。もちろん、学んだ後は、ホストクラブを借り切って実地の体験付き。

 仲間に声を掛けると、思った以上に反応が良く、すぐに20人の定員が満席となった。参加者は、建設会社の社長、旅館の女将(おかみ)、労働組合の執行部と実にさまざま。ホストクラブの現場では「バブルの頃と違って人のお酒を飲んで売り上げを稼ぐのではなく、きちんと接客してリピーターを増やす」や、ホストを使い捨てにしないように、稼げなくなったときには「そろそろ黒服をやってみないか」と提案することもある。

 また近頃は、実験的に新たな焼き肉店をオープンさせ、次の時代の「居場所づくり」を行っている。ある社長は「反省することばかりだよ」と笑っていた。

 勉強会の後は、実地体験。人を楽しませるとはどういうことか。もともと関西系の会社なので、やっぱり、笑わせる、笑わせる。楽しくて、ためになる時間をいただいた。

【プロフィル】大谷由里子

 おおたに・ゆりこ 奈良県生まれ。1985年、吉本興業入社。横山やすしのマネジャーを務め、宮川大助・花子などのタレントを次々と売り出した「伝説の女マネジャー」として知られる。2016年3月、法政大学大学院・政策創造研究科を修了。「笑い」を用いた人材育成法は、NHKスペシャルなど多くのメディアで話題に。著書は、34冊を数える。

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