【トラノコのかんたんマネー講座】忠臣蔵の時代背景と経済

 元禄15年の今日12月14日、赤穂浪士が幕府の礼式をつかさどる吉良上野介(きら・こうずけのすけ)邸へ討ち入りした事件は、「忠臣蔵」として歌舞伎やドラマなどで多くの再現がなされています。その中で、旧赤穂藩家老の大石内蔵助(おおいし・くらのすけ)が、幕府や吉良家の目を欺くための放蕩三昧(ほうとうざんまい)の華美な生活は、のちに元禄文化といわれる町人文化の発展の空気を伝えるものです。

 この元禄年間、犬公方として有名な5代将軍徳川綱吉は、幕府財政の健全化を狙い、1枚当たりの貨幣製造に必要な金を3分の2に減らす改鋳(かいちゅう)を行いました。この改鋳が、貨幣経済進展のきっかけとなり、町人の実質所得が向上して遊興娯楽が広がり、松尾芭蕉、井原西鶴、歌舞伎の初代市川団十郎ら元禄文化のスターを生み出しました。

 「悪貨が良貨を駆逐(くちく)する」という例として取り上げられることの多い元禄改鋳ですが、近年の研究により幕府財政の健全化と経済発展につながったという評価が有力となり、犬公方と揶揄(やゆ)される綱吉の治世の再評価につながっています。

 (トラノテック取締役 藤井亮助)