出光興産と昭和シェル石油の経営統合は、出光創業家の反対などの曲折を経てようやく実現が確定した。少子化やエコカーの普及で国内では石油製品の需要減退が進む。石油事業に続く次世代の柱をどう育てるかが新会社の課題の一つだ。一方、統合から3年目となる2021年度に合計600億円を掲げている統合効果を確実に実現できるかも問われる。
「屈指の競争力を持ち、持続的な成長が可能な、レジリエント(しなやか)な企業体への進化を図っていく」-。出光は18日、臨時株主総会での統合承認を受けてこうコメントした。
国内の石油需要はピークだった1999年度に比べて2016年度では約3割減少し、今後も緩やかに減っていくと見込まれている。みずほ証券の新家法昌シニアアナリストは「(石油事業に続く)次の事業の柱をどう育てていくかは、出光・昭シェルだけでなく、石油元売り各社に共通する大きな課題のひとつだ」と指摘する。
統合新会社は、19~21年度の投資総額5000億円のうち、有機EL材料などの高機能材や電力・再生可能エネルギーに1200億円を投じる方針。新家氏は「高機能材や再生エネといった分野をどれぐらいの事業の柱に育てられるかが一つのポイントになる」とみる。
一方、出光・昭シェルは今年10月に、従来は5年間で合計500億円としていた統合効果について、21年度に合計600億円と100億円上積みしている。
両社は統合効果の先取りに向け昨年5月から原油調達や供給、物流・販売などの分野で協働事業を展開。今年春からは役員の相互派遣とともに、従業員も一部の部門で執務場所を一緒にした。統合新会社の社長となる出光の木藤俊一社長は「来年4月にロケットスタートを切れる」と語る。
ただ、統合が出光創業家の反対で漂流を続けた間に情勢は変化した。旧JXホールディングス(HD)と旧東燃ゼネラル石油が17年4月に統合し、国内の元売り最大手のJXTGHDが誕生。出光・昭シェルは先を越された。JXTGHDの統合効果は、初年度の17年度が441億円と計画を200億円超上回り、18年度は800億円、19年度は1000億円以上を掲げるが、同社首脳は「(達成の)早期化や(額の)積み上げは常に狙っている」と意気込んでいる。(森田晶宏)
◇
■出光・昭シェルの経営統合問題の経緯
・2015年7月
統合に向けた協議本格化を発表
・2015年11月
統合に関する基本合意書を締結
・2016年6月
出光創業家が統合への反対を表明
・2016年10月
統合予定時期を「未定」に
・2016年12月
出光が昭シェル株31.3%を取得
・2017年7月
出光が公募増資。出光創業家の出光株の保有割合は26%程度に低下し「拒否権」を失う
・2017年12月
出光創業家が出光株を買い増し
・2018年6月27日
出光が出光創業家との協議再開を発表
・2018年7月10日
19年4月1日の統合で合意と発表
・2018年10月16日
統合新会社の役員人事や株式交換比率を発表
・2018年12月18日
両社の臨時株主総会で統合を承認
・2018年19年4月1日(予定)
統合新会社が誕生