【2019 成長への展望】大林組社長・蓮輪賢治さん(65)


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 ■新たなインフラ整備へ技術開発推進

 --国内市場の見通しは

 「首都圏を中心とした都市の開発事業は2020年以降、より活発な動きを見せようとしている。こうした背景の下、大林組の主戦場であるオフィスビルは、高度成長期に建てられた高層タイプの更新需要も含めて堅調に推移するとみている。昨夏の激甚災害を踏まえ土木事業が拡大するとみられるほか、首都高速道路に代表される大規模更新や維持管理といった事業分野も活発化すると予測している」

 --経営課題は

 「建築と土木、開発、新領域という4つの収益分野を抱えている。このうち新領域分野では、洋上風力など再生可能エネルギー事業を推進していきたい。一方、社会システムの変化に私たちの技術をどういった形で生かせるのかという観点から分析を行い、果敢に挑戦することも重要だ。例えば車の自動走行が普及して空飛ぶ車が誕生した場合、新たなインフラ整備に向けてわれわれの建設技術がどう変わっていくのか。そこに先んじていける新しい技術開発の糸口があるのか。常にアンテナを張り巡らせて対応していきたい。ただ、独自で開発するのは手間がかかる。オープンイノベーションによって、ベンチャーなど新しい発想を持った人たちとの協業も視野に入れながら、技術やビジネスモデルの開発に取り組んでいく」

 --働き方改革の推進も重要だ

 「シフトに対する考え方や現場での習慣を変えるとともに、IoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)によって生産性の向上を図ることで、ヒューマンエラーを抑える。例えば配筋検査など技術者の目に依存していた作業工程を、ロボットなどのセンサー技術で対応すればミスも減る。日報や帳票類の作成もIoTとAIで合理化を進めていく」

 --2025年国際博覧会(万博)の開催地が大阪・夢洲(ゆめしま)に決まった

 「当社の出自は関西。プロジェクトに参加することは名誉なことであるし、関西経済の発展にいささかでも貢献したいという思いが強い。IR(統合型リゾート施設)の誘致活動も加速すると思われるので、『大阪万博・IR室』という新組織も設置した。今度の万博では恐らく、持続可能な未来の社会といったテーマが浮上するだろう。単に建設というハード技術だけではなくて、環境やヘルスケアといった人間としての生活空間の未来像にチャレンジすることが必要だ。結果としてソリューションの糸口が一つでも見いだせればありがたい」

【プロフィル】蓮輪賢治

 はすわ・けんじ 大阪大工卒。1977年大林組入社。執行役員、常務執行役員、取締役常務執行役員、同専務執行役員を経て2018年3月から現職。大阪府出身。