【2019 成長への展望】ワコム社長・井出信孝さん(48)

ワコム井手信孝社長
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 ■デジタルペンの浸透、ビジネス移行へ

 --米ラスベガスで家電見本市(CES)が始まる

 「CESに出展しないが、現地ホテルでプライベートショーを開催。約50社を招待し、当社の世界観を体験できる機会を設けながら説明する。デジタルペンなどデジタル文具を推進するイベント『コネクティッド・インク』の第3回大会を昨年11月に東京で開催、『ビジョンを語る段階からビジネスに移行するステージに入った』とあいさつした。ビジネスを創っていくに当たり、そのドアを開くチャンスにしたい」

 --世界観とは

 「デジタルペンから生み出されるデジタルインク(データ)は、単なるインクによる筆跡という枠を超えて『いつ、誰が、どこで、どんな状況で、どのような思いで書いたか』という人間の軌跡そのものを表すビッグデータでもある。このデジタルデータを活用すれば、将来的には仮想現実(VR)の世界や人工知能(AI)などの最先端技術と連携、新しいデジタルペンの体験と価値を提供できると考えている」

 --昨年4月に社長に就任した

 「重責とかプレッシャーはない。今までよりいろいろなことができるとポジティブに捉えている、社内向きの仕事は極力減らし社長室も廃止した。チームメンバー(社員)と対話の機会を増やすためフリーアドレスのどこかに出向いたり、外に出て事業パートナーやユーザーの話を聞いたりしている。またIR(投資家向け広報)にも注力している。ビジョンにほれ込み、技術を理解してもらうためだが、われわれとは違う視点で質問が来るのでワクワクして聞いている」

 --2019年3月期の業績(連結)は

 「昨年10月に通期売り上げを850億円から890億円に上方修正し、営業利益や最終利益はそれぞれ40億円、30億円とする期初見通しを据え置いた。この数値をやり抜く。売上高1000億円、営業利益率10%を目指す22年3月期までの中期4カ年経営計画の着実な一歩となる」

 --しかしIT業界は変化が激しい

 「直線的につながるとは考えていない。今は情報過多の時代で、ベクトルは『広く、浅く、仲良くつながる』の世界だが、4年後は自分志向になり『自分の本質とつながる』ことが求められる。押しつけがましいAIは廃れ、たたずむようにサービスを提供するホームAIになる。このため自分の軌跡を可視化できるデジタルペンの出番がくる。そのためにオープンイノベーションでモノのインターネット(IoT)企業などと組んで手書きの重要性を訴えていく」

【プロフィル】井出信孝

 いで・のぶたか 国際基督教大大学院行政学科国際法修士課程修了。1995年シャープ入社。2013年ワコム入社。17年エグゼクティブ・バイスプレジデントを経て18年4月から現職。東京都出身。