【2019 成長への展望】神戸製鋼所社長・山口貢さん(61)


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 ■安全検証と再発防止策で信頼回復へ

 --事業環境は悪くない

 「当社が手掛ける鉄鋼やアルミニウム、機械は、全て国内の需給にタイト感があり、海外も堅調に推移している。建設機械は中国を中心に受注が一昨年から上向き、昨年もそうした状況が続いた。ただ、米中貿易摩擦など(政治的な)動きがあった。現時点で経営に直接的影響はないが、不透明感はある」

 --鉄鋼需要も国内外ともに堅調だ

 「貿易摩擦の影響を除けば、今年も同じような感じになるのではないか。ただ、昨年は自然災害や生産トラブルの影響を少なからず受け、需要は好調だったのに生産や販売が減少した。(主力の)加古川製鉄所(兵庫県加古川市)でトラブルがあったのが残念だ」

 --2020年度まで5カ年の中期経営計画は見直しを進めている

 「自動車の軽量化への対応、加古川への高炉集約、神戸製鉄所内における発電所の建設開始、中国建機事業の再構築と、中計に盛り込んだことはおおむね実行してきた。一方、(性能データ改竄(かいざん)などが発覚した)品質事案は想定外だった。前提が変わっているので方向転換が必要か見直そうと考えている。ただし素材、機械、電力の3分野に注力する方向性は変えない」

 --再発防止の進捗(しんちょく)状況は

 「外部調査委員会が公表した最終調査報告書でも示されたように、安全検証と再発防止策をしっかり実行するのが信頼回復の第一歩だ。昨年はガバナンス(企業統治)や品質管理プロセスなどを含む、さまざまな改善策に着手した。防止策の進捗状況は外部の品質監督委員会が監視しており、必要に応じ提言もしてもらっている」

 --社長自身はどう対応したのか

 「現場の声が経営陣に届いていないとの反省を受け、昨年4月から事業所など24拠点を40回以上訪問した。現場(の各層)と双方向のやり取りをして、変わらないといけないという現場の意思を強く感じた。それをいかに結果に結びつけるかが私の仕事だと痛感している」

 --今年の抱負は

 「社長に就任してからの8カ月は、あっという間に終わった感じだ。信頼回復に軸足を置き、現場を回る中で私がどんな人間なのか社員に見せ、直接話そうとした。ある程度伝わったと思う。一日も早く神戸製鋼は変わったといわれるようにならないといけない。今年を信頼回復を確かなものにしていく始まりの年にしたい」

【プロフィル】山口貢

 やまぐち・みつぐ 北大法卒。1981年神戸製鋼所入社。執行役員、取締役専務執行役員、副社長執行役員などを経て2018年4月から現職。北海道出身。