【クラウドWatch】日立、鉄道車両向けシステム開発

 ■AR技術でボルト締結作業管理

 日立製作所は、YAMAGATA、京都機械工具とともに、鉄道車両向けに拡張現実(AR)技術を利用したボルト締結作業管理システムを開発した。

 同システムは、作業者が装着するヘッドマウント型スマート端末のディスプレー上に締結すべきボルトの位置を表示し、表示通りのボルトを規定の力で締めることができたことをメーターで確認すると同時に、デジタル処理によって自動的に管理できる。

 鉄道車両製造においては、機器類を固定するボルトが走行中も緩むことがないよう確実にボルトを締める必要がある。これまで日立では、デジタル式トルクレンチとタブレット型パソコンにより締結力の判定と記録を自動で行うデジタルトルクレンチシステムを使い、自動で締結力を判定し結果を記録していた。

 具体的には、作業者がタブレット上に表示されたボルトを選択後、連動するデジタルトルクレンチによって締結作業をすることにより、自動的に締結結果の照合と合否判定、データベースへの登録を行っていた。この方法では、作業者はタブレット上で作業対象のボルトを選択、指定する必要があった。また、作業者はタブレットで選択したボルトと実物のボルトが相違ないことを確認して締め付け作業を行うが、タブレット上で指定したボルトと実際に締結したボルトが一致しているか否かの確認は自動的に判定することができず、作業ごとに作業者と検査員などが人手による複数回の安全性、品質確認を行ってきた。

 こうした課題に対して、日立では従来のデジタルトルクレンチシステムに加え、ヘッドマウント型スマート端末を利用したAR技術を導入することで、締結作業全体のデジタル処理による自動合否判定を実現した。

 ヘッドマウント型スマート端末のディスプレーには締結すべきボルト上にボルトの3Dモデルが表示され、事前に入力した3Dモデルに付随する設計データを基に作業者を誘導する。スマート端末に付属するカメラは締結作業を常時監視しており、デジタルトルクレンチとの連携により、指定のボルトが規定の力で締められたかについて自動判定する。

 作業が指定通り行われたと判定された場合は次の作業が表示され、ボルトの締結が不十分だった場合などは再度作業を行うよう表示される。(インプレスウオッチ)