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珍しい「再登場」 かつての親会社がベイスターズと浮上狙う (1/2ページ)

佐野慎輔

 オールド野球ファンには、ちょっとうれしい話だ。1日だけだが、丸枠に「は」の字を描いた大洋ホエールズの初代ユニホームが復活。3月10日に“生誕”の地・山口県下関市で開催する横浜DeNAベイスターズのオープン戦にお目見えする。

 今年は前身の大洋ホエールズが1949年11月、山口県を保護区域として創設されてから70周年にあたる。横浜DeNAでは数々の記念事業を企画し、復刻ユニホームでの下関開催もその一つ。この企画にかつての親会社で食品大手のマルハニチロがスポンサー参加することに注目したい。

 「再びベイスターズとともに行動できる日を迎え、万感の思いであります」。1月下旬、両社による記者会見でマルハニチロの伊藤滋社長はこう話した。「球団の一時代を支えた同志として、一緒に取り組みましょうという球団のご意向を伺い、心を動かされました」

 横浜DeNAの岡村信悟社長は、「先人たちが築いてくれた歴史の重みを大切に…」と仕掛けた理由を述べた。

珍しい「再登場」

 こうした旧親会社の再スポンサー化は案外、珍しいといってもいい。東京ヤクルトスワローズと前身の産経アトムズを保有していたフジサンケイグループとの関係の深さを例外に、各球団と旧親会社との関わりは希薄である。マルハニチロも2002年、TBSホールディングスに球団の経営権を売却した後は関わりを断っていた。17年ぶりの再登場である。

 今回の“復活”には横浜DeNAの働きかけがあったが、マルハニチロ側の思惑ものぞく。

 同社は07年、遠洋漁業や捕鯨で知られた大洋漁業を前身とする「マルハ」と、北洋漁業に由来を持つ日露漁業の後身「ニチロ」とが統合して誕生した。水産や食品部門でのグローバル化と養殖事業を推進して、18年3月期決算では売上高9188億円、最終利益161億円を記録した。

 さらなる収益向上を目指して中期経営計画を進めており、計画最終年の22年3月期に売上高1兆円の達成を目標としている。計画では「10年後のありたい姿」としてグローバル領域における「総合食品会社」と定義。今秋には前身時代からの「マルハ」「あけぼの」「アクリ」の3つのブランドを、「マルハニチロ」ブランドに統一する。かつて保有していた球団を活用し、ブランド名の露出を増やしていけば、統合効果を引き上げることはいうまでもない。

 一方で横浜DeNAにとってはスポンサー収入もさることながら、古くからのファンを大事にする球団としてのイメージ戦略、マルハニチロを通した新たなファン開拓も期待できる。

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