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孤高からの脱却は? アストンマーティンを悩ます“歴史に縛られた悲劇” (1/3ページ)

木下隆之
木下隆之

 「アストンマーティンは自らの歴史に縛られていることが悲劇ですよね」-。この言葉の意味は深い。アストンマーティンは孤高のブランドとして確立してしまったことの悩みがある。誰もが美しいと思える均整のとれたフォルムに手を加えることは、それが進化だとしても退化として受け止められる。変われば酷評され、変わらなければマンネリと揶揄される。速いテンポで変化が求められるこの時代にあって、アストンマーティンは変化することができない。自らの歴史に縛られていることが悲劇とはそういうことかもしれない。(レーシングドライバー/自動車評論家 木下隆之)

 ジャガー、BMWらも同様の悩み

 かつてのジャガーも同様の悩みを抱えていた。低重心が強く前後に伸びやかなフォルムはジャガーの伝統だった。丸型4灯ライトからの隆起がボンネットにつながる造形もジャガーそのものだった。

 BMWも同様に、創業期に誕生したキドニーグリルは個性的な意匠として認知された。メルセデスのフロントマスクもそれはそのままメルセデスである。あるいはポルシェも同様に911の呪縛にもがいている。

 ただし、ジャガーは伝統からの華麗な脱皮を果たした。歴史が積み重ねてきたジャガーらしさは失うことなく、現代的なアレンジに成功したと言えるだろう。BMWもしかり、メルセデスしかり、あるいはポルシェも脱皮に向けて現在進行している。

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