患者のiPS使い遺伝子修正 高コレステロール血症、幹細胞が正常機能


【拡大】

 悪玉コレステロール値が生まれつき高くなる「家族性高コレステロール血症(FH)」の患者の血液から人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作製し、ゲノム編集して病気に関する部分を修正することに成功したと、金沢大の川尻剛照准教授(循環器内科学)らの研究チームが発表した。

 FHは、悪玉コレステロールが血液中を流れた後、不要となった分を肝臓でうまく回収できない病気。遺伝子修正したiPS細胞から作った肝細胞は回収機能が正常だったといい、チームは「細胞移植などの根治治療につながる基礎研究成果」としている。

 チームによると、FHには両親のいずれかから遺伝子を受け継ぐ「軽症型」と、双方から受け継ぐ「重症型」があり、国内で軽症型は200~300人に1人、重症型は16万~36万人に1人いるとされる。重症型に有効な薬は少なく、十分な治療法がないという。

 チームは重症型患者の血液に含まれる白血球の一種「Tリンパ球」からiPS細胞を作製し、ゲノム編集で、悪玉コレステロールの回収に関わる遺伝子を修正。修正後のiPS細胞から作った肝細胞は、機能が正常だっただけでなく、患者の免疫細胞から攻撃されなかったという。