【主張】「日の丸液晶」頓挫 官民ファンドの責任重い

資本提携について会見で説明するジャパンディスプレイの月崎義幸社長(左)ら=12日、東京都港区(飯田英男撮影)
資本提携について会見で説明するジャパンディスプレイの月崎義幸社長(左)ら=12日、東京都港区(飯田英男撮影)【拡大】

 経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)が中国や台湾の企業連合から金融支援を受け、傘下に入ることになった。国内電機3社の液晶部門を統合し、「日の丸液晶」として復権を目指したが、その取り組みは頓挫した。

 経済産業省が所管する官民ファンドであるINCJ(旧産業革新機構)が設立を主導し、多額の公的資金を投入した。それでも再建できなかったのは、利害関係者が多いために迅速な意思決定ができず、世界の液晶技術の流れを見誤ったのが最大の要因だろう。

 官民ファンドが企業に出融資する狙いには、業界再編を通じた産業競争力の強化があげられる。だが、官主導の再編は経営責任が曖昧になる弊害も大きい。官民ファンドはその役割を厳しく限定し、安易な支援は慎むべきだ。

 JDIは7年前、スマートフォン向けの中小型液晶で生き残りを図るため、日立製作所と東芝、ソニーの3社の関連事業を統合して発足した。旧革新機構が大株主となり、競争力を高めるため公的資金を活用し設備投資を進めた。

 だが、韓国や台湾、中国の液晶企業が激しい競争を繰り広げる中で、JDIは次世代液晶の「有機EL」の開発や投資で出遅れた。政府の意向を気にして人員削減や工場集約化などのリストラも遅れ、5期連続で赤字の見通しだ。寄り合い所帯のJDIは機動的な経営判断を下せなかった。

 とくにJDIが5年前に株式上場した後も、旧革新機構が筆頭株主として経営に関与し続けたのは問題だ。これで企業統治が機能せず、経営責任も不透明となったからだ。さらなる延命に手を貸さなかったのは当然だが、旧革新機構や経産省の責任は大きい。

 日本の総合電機は1990年代まで世界の液晶市場を牽引(けんいん)してきたが、2000年代に入ると技術革新が相次いだ世界の潮流に乗り遅れた。国内企業は液晶テレビから相次いで撤退し、JDIに参加しなかったシャープも3年前に台湾・鴻海に買収された。

 「日の丸液晶」の頓挫は、隆盛を誇ったわが国総合電機の凋落(ちょうらく)の象徴でもある。多様な事業部を抱える総合企業では経営資源が分散し、黒字部門が赤字部門を補うなどで強みを発揮しにくい構造となる。日本企業はこの失敗を教訓としなければならない。