実際にサーキットを走らせると、軽量化の恩恵が味わえる。もともとは決して軽くないエンジンをフロントの高い位置に搭載することのデメリットが鼻についたが、フロントヘビーの悲しい感覚は薄らいでいる。タイヤが悲鳴をあげるような限界コーナリングでさえ、ステアリングを切り込むことでノーズをエイペックス(コーナーの内側の頂点)に引き戻すことも容易になった。
そしてそこで、アクセルペダルを踏み込んでみる。すると右足の動きに忠実に、コーナーリングの軌跡が変化する様子が実感として残るのだ。磨き上げたエンジンレスポンスが、コーナリングに影響することを突きつける。
コーナリングはハンドルだけでするのではない。アクセルペダルも第二のステアリングとして有効だ。右足の操作だけでアンダーステアやオーバーステアを自在に引き出すことがドライビングプレジャーであり、走りの醍醐味なのである。それを堪能するためには、鋭い反応を示す大排気量NAエンジンが不可欠だ。だからそこにもメスを入れたというわけである。
レクサスRCFは、2019年のいまになってビックマイナーチェンジされて誕生した。それはつまり、大排気量NAが消えゆくことを悲しみ哀愁を込め、走りの楽しさを声高に叫んでいるように思えた。
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【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちらから。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【クルマ三昧】はこちらから。