ちなみに、試乗車は入管したばかりの6台のうちの1台だった。公安の認証待ちの状態であり、十分な数が揃っていない。そのあたりの混乱ぶりから想像できるのは、この勢いを止めてはならぬという鼻息の荒さだ。一刻も早く魅力的なモデルを投入することでラインナップを充実させ、さらなる顧客獲得を急ごうとする施策の表れだ。
腰を抜かすほど魅力的
実際に走らせてみると、驚くほど魅力的な仕上がりに腰を抜かしかける。搭載するディーゼルエンジンは、直列4気筒ターボエンジンだ。排気量は2リッターもある。すでに展開済みの1.3リッターガソリンターボよりもパワーもトルクも強化されているのだ。最高出力はガソリンの136psよりも強力な150pを発揮する。発進に特に威力を発揮する最大トルクは、ガソリンが200Nmなのに対して320Nmもある。パフォーマンスは圧倒的なのである。
特にターボの味付けがアグレッシブだから、アクセルをちょっと踏んだだけで急発進する。慣れるまでは、慎重なアクセルワークが必要だろう。
そんなだから、極低回転域だけですべてが賄える。発進はアクセル開度1mmで事足りるし、100km/hクルージング時に回転計に目をやると、針は1300rpm付近をさまよっていた。アイドリング+αで生活できるのである。そんなこともあって、「EUROd NORD」を先取りした環境性能を手にしたのであろう。
個人的には、ジュピターレッドのA200dが気に入った。富裕層の奥様が都会をクルーズする姿が頭に浮かんだ。メルセデスジャパンの笑いは、これからもしばらく止まりはしないだろう。
【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【クルマ三昧】はこちらからどうぞ。