さらにそれを裏付けるのは、SZの前後重量配分がもっとも理想に近いことである。車検証に記載の数値で比較すると、ハイパワーの直列6気筒ターボ搭載車RZは、前780kgなのにたいして後は740kg。ハイパワー2リッターのSZ-Rは前730kgで後720kg。一方のローパワーターボのSZは前710kgで後700kg。
順番に前後重量配分比を並べれば、51.3%、50.7%、50.3%となる。SZの車両重量はそもそも軽いうえに、前後重量配分は、コーナリングマシンとして理想的な前50%:後50%に近い。BMWを走りのブランドに押し上げてきた基本思想をもっとも受け継いでいるのがSZだと言えるのである。
実際に、走りは素直である。17インチタイヤを履いていることでややルーズなフィーリングは否めないが、RZやSZ-Rと違ってシンプルなパーツで構成されているために走りは素直なのだ。それでいて価格もギリギリ500万円を下回る。RZは690万円だから、これはもうプレミアムゾーンに組み入れてもいい価格帯であることを考えればお得感があるのだ。
「SZ」こそ、本当のスープラのような気がしてきた…。
【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【クルマ三昧】はこちらからどうぞ。