遊技産業の視点 Weekly View

「遊技産業レポート」理解の一助に

 □ワールド・ワイズ・ジャパン代表、LOGOSプロジェクト主幹・濱口理佳

 「遊技産業レポート2019」がフジサンケイビジネスアイの産業総合研究所から発刊された。そこには、パチンコホールの売り上げや粗利規模をはじめ、納税額や雇用規模を主要業界と比較したもの、また他産業との関わりなどパチンコホールの市場を浮き彫りにするデータとともに、人材に対する企業の取り組みや社会貢献活動、遊技への依存問題に対して具体的にどのような取り組みが行われているのかなど、データや事例を引用しながら分かりやすく記載されている。

 カジノを含む日本版IRの実現を背景に「ギャンブル等依存」が取り沙汰され、とりわけパチンコ・パチスロに対してはマスコミや政治家の産業としての遊技業に対する知識の欠如(無関心)や誤解も手伝って、世間から厳しい視線が向けられるようになった。そのようななか、警察庁の意向によりエビデンスのないまま昨年2月1日に行われた改正規則の施行で、パチンコホールやメーカーをはじめ、多くの職域における業況が著しく悪化した。

 パチンコホールの店舗数は1万軒を割り、産業そのものが縮小傾向を見せる背景で、それでもパチンコホールだけで約23万人、産業全体で考えれば50万人規模の雇用を創出している現状。「このままでは、遊技産業そして業に携わる企業の生き残りが図れない」「社員やその家族を路頭に迷わせるわけにはいかない」との危機感が大きく膨らむのも無理はない。これまで、産業を維持・存続させるために警察庁の指導に沿ってさまざまな規制強化を受け入れてきた業界だが、もはや“腹”に代える“背”もない状況に追い込まれつつある。

 世間ではパチンコ・パチスロという遊びの存在自体の是非を問う声が依然としてある。だが実際、それらの多くは感情的なものや業界に対する理解不足に起因する。遊技産業がどのようなものなのか-。産業の実像を客観的な資料や統計に基づいて把握し、その経済的な価値や波及効果を探るためにも、ぜひ、同レポートを一読いただきたいと思う。

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【プロフィル】濱口理佳

 はまぐち・りか 関西大学大学院文学研究科哲学専修博士課程前期課程修了。学生時代に朝日新聞でコラムニストデビュー。「インテリジェンスの提供」をコアにワールド・ワイズ・ジャパンを設立。2011年、有志と“LOGOSプロジェクト”を立ち上げた。

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