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なんでいま? 「タピオカドリンク」が再ブームになっている背景 (3/3ページ)

 先ほども申し上げたように、台湾に行った日本人はほぼ間違いなく黒タピオカドリンクを飲む。そういう人たちがSNSで黒タピオカドリンクの画像や映像を拡散する。帰国した後には、家族や友人に「おいしかった」と宣伝する。

 そういう好循環がこの数年繰り返されてきたことで、20年前から存在していた黒タピオカドリンクの価値が改めて見直され、店舗数の増加につながった。そこに加えて、ブームに拍車をかけたのが、「参入障壁の低さ」である。

 黒タピオカ専門店、普及の「追い風」

 黒タピオカドリンク専門店の長蛇の列に並んだことのある方はなんとなく思い当たるだろうが、実はこれらの店は人気のパンケーキ店やクレープ店、さらにはスタバの高級旗艦店「スターバックス リザーブ ロースタリー 東京」なんかに並ぶよりもはるかに「回転」が早い。

 パンケーキやクレープのように注文を受けてから1枚1枚焼くわけでもないし、高級スタバのように特別な資格を持つバリスタが1杯1杯丁寧にコーヒーをいれるわけでもないからだ。極端な話、つくってあるドリンクを注いで、そこに黒タピオカを投入するだけででき上がりなので、より多くの客により早く提供できるのだ。

 こういう強みが黒タピオカ専門店の普及の「追い風」になっていることは言うまでもないだろう。

 特別な機材も不要だし、スタッフにも特殊な技術を教えなくてもいい。タピオカという原料の品質さえ担保できれば、独自のノウハウがなくてもおいしいドリンクができる。つくる人間の「腕」で味が大きく左右されるわけではないので、事業者側からすれば、参入のハードルが低いのだ。

 そんなことを言うと、「タピオカ専門店をバカにしている! 謝罪しろ!」と怒りがこみ上げてくる方も多いかもしれないが、タピオカドリンクが「入れるだけ」で誰でも簡単につくれるものだということは、タピオカの輸入業者や生産者が言っていることだ。

 実際、タピオカを扱う通販業者のWebサイトなどで販売しているタピオカは、レンジで1分か熱湯3分でモチモチにできるそうで、文化祭や学園祭の模擬店でも大人気だとうたっている。

 模擬店をやる学生でも簡単につくれるドリンクだからこそ、台湾でも街のいたるところで屋台ができている。日本中で次から次へとタピオカドリンク専門店が現れているのは、これが理由だ。

 つまり、過去最高の「台湾人気」に加えて、このような「誰でもできる」という強みが、現在の黒タピオカドリンク人気の土台になっているのだ。

 今回の黒タピオカブームという現象を見てつくづく思うのは、「観光」とは、実は最強の「文化輸入」であるということだ。

 黒タピオカブームから学ぶこと

 日本では、「ブーム」は国内のトレンドや市場環境が生み出していると捉えがちだが、黒タピオカブームやパンケーキブームからも分かるように、「海外旅行での消費動向」が大きな影響を与えている。

 これはつまり、日本を訪れる外国人観光客の消費動向も、彼らが祖国へ戻ってからの「日本ブーム」につながる可能性もあるということだ。

 しかし、残念ながら日本ではそういう考え方は一般的ではない。「ブーム」というものは、仕掛けるもの、ゴリゴリに押し付けて知らしめるもの、という思い込みが強いのだ。

 それを象徴するのが、日本製の食品や電化製品などを外国人に持たせて祖国へ里帰りをさせ、「見たか! これがメイド・イン・ジャパンの底力だ!」とか一方的に自慢するようなテレビ番組だ。

 「クールジャパン」が壮絶にスベったことからも分かるように、自画自賛の「文化輸出」は決して成功しない。単なる民族主義の押し売りになってしまうからだ。

 そういう傲慢(ごうまん)な考え方は捨てて、黒タピオカやパンケーキという文化輸出の成功例に学んで、1人でも多くの外国人観光客に日本に来てもらえるような施策に力を入れたほうがいいのではないか。

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