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まるで電池版エアバス構想 EV主導権狙う欧州 仏が仕掛ける野望 (2/3ページ)

 構想では、両政府の補助金を含め、官民で最大60億ユーロ(約7500億円)を投じ、2020年以降、工場を建設して高性能の電池を開発・生産。

 つまり、ルノーとFCAが統合すれば、主要国の仏独イタリアがそろい踏みし、“欧州大連合”の枠組みが整う。同時にFCAの米クライスラー部門を通じて世界2位の米自動車市場への影響力も確保することで、EU内でEV電池を一大産業に育成するという政策的な戦略の側面もある。

 環境規制が後押し

 FCAの参画はお預けとなったが、2018年の自動車大手の世界販売台数をみると、ルノーや、独フォルクスワーゲン(VW)、仏PSA(旧プジョー・シトロエン・グループ)といった欧州大手の合計は約1860万台と、米自動車市場の年間販売台数(約1727万台)も上回る規模だ。

 もちろん、自動車各社の現在の販売台数すべてが直ぐにEVに置き換わり、電池の供給対象になるわけではないが、環境規制への対応で新車のEVシフトは世界的に加速している。

 特に問題なのが「CAFE(企業平均燃費)」規制だ。車種別ではなくメーカーの総出荷台数を加味した平均燃費(過重調和平均燃費)に規制をかける方式で、各社は新車販売の一定割合をEVに転換する必要に迫られている。

 最も厳しい欧州は21年から燃費・CO2排出規制の基準が段階的に引き上げられ、30年の規制水準は現在走っている車のほぼ半分をEVに置き換えないと達成できないともいわれている。このため、VWは既に30年までに総販売台数の40%以上をEVとする方針を打ち出している。

 アジア各社に影響も

 電池価格の引き下げには量産規模が大きな威力を発揮するだけに、欧州自動車大手のEVシフトを追い風に、電池版エアバスが軌道に乗れば、アジアの電池各社には間違いなく大きな脅威になる。

 最も危機感を抱いている電池メーカーは韓国勢だろう。CATLやBYDには世界最大の中国自動車(約2800万台)と政府支援という強力な後押しが自国にあるの対し、韓国の国内自動車市場規模はわずか約180万台。自動車大手も現代自動車グループに限られるため、韓国の電池各社は欧州自動車大手向けに生産投資を拡大してきた。

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