高論卓説

低迷続ける野村株 「ナンバーワン・リスク」顕在化か (1/2ページ)

 野村証券を中核とする野村ホールディングス(HD)の株価が6月初め、年初来安値の331円を付けた。時価総額の東証ランキングは一時、上位100の圏外に弾き出された。上場する傘下の野村総合研究所(NRI)の時価総額を下回り、“親子逆転”現象が生じた。株価バブルの最盛期だった1989年末。野村の株価は3400円台、時価総額ランキングは10位だった。「あの野村が…」。証券界で断トツのガリバーだった野村のかつての実力を知るベテラン証券マンらからは驚きの声が上がった。

 定時株主総会を前にした時期の株価低落に焦燥感を抱いたのだろう。野村HDは6月18日、大量の自社株買いを発表した。来年3月末を期限に、3億株(上限、発行済み株式数の8.6%)、金額で1500億円(同)を買い入れる。

 自社株買いの原資はNRIが実施する自己株式の公開買い付けに応じる形で、保有するNRI株式1億株余を売却して得る約1600億円である。何のことはない。困った親が子に急場を救ってもらうような株価対策だ。

 野村HD株は自社株買い発表の翌日こそ大幅に上げたが、その後は横ばいで推移。時価総額ランキングは93位(6月28日現在)と順位をわずかに上げただけだった。

 『続企業王国論』(草柳大蔵著、文芸春秋刊)によれば、野村の飛躍的な成長を支えた一つは「五箇条の御誓文」の精神だった。「広ク会議ヲ興シ万機公論ニ決スヘシ」。新人記者時代、取材で野村本社を訪れると、役員フロアの部屋のほとんどはドアが開き放し。社員が気軽に出入りし、何か議論を交わしている声がよく聞こえた。風通しのいい会社に映った。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus