高論卓説

日本郵政グループ経営は至難の業 国鉄民営化に倣い地域分割検討を (2/2ページ)

 そもそも郵政事業、なかんずく郵貯、簡保の金融部門は国の財政投融資と一体のものであった。もっぱら資金吸収が使命で、集められた巨額な資金は財政投融資制度を通じて、国の第2の予算に充てられてきた。この仕組みは国の金融がまだ十分に成熟していない段階ではうまく機能したが、金融の高度化・グローバル化が急速に進む中、郵貯、簡保と財政投融資は切り離され、民営化に大きくかじを切った。

 しかし、郵便局は民営化が進められながら、国の資本が残るため業務範囲は制限され、全国規模でのユニバーサル(均一)サービスが義務付けられている。その一方で貯金限度額は相次いで引き上げられてきた。限度額は今年4月に倍の2600万円に拡大されたばかりだ。まさに日本郵政は手足を縛られたまま肥大化するジレンマを抱えて疾走している。

 また、日本郵政、日本郵便、ゆうちょ銀、かんぽ生命の各トップは、政権が変わるごとに猫の目のように交代した。現在は民間金融機関の出身者が各トップに就いているが、経営のステークホルダー(利害関係者)は多岐にわたる。経営は連立方程式を解くような至難の業と言っていい。その意味では同情を禁じ得ない。

 コーポレートガバナンス(企業統治)改善の最大の処方箋は、皮肉ながらできるだけ早く国が日本郵政グループの株式を放出し、完全民営化を実現することかもしれない。だが、やはり日本郵政グループは巨大すぎる。ゆうちょ銀をとってみてもメガバンクを超す規模を誇る、いわばギガバンクである。

 今回の不祥事を契機に今一度立ち止まり、旧国鉄のように地域分割して、各地域の核となる地域金融機関として再出発してはどうだろうか。

【プロフィル】森岡英樹

 もりおか・ひでき ジャーナリスト。早大卒。経済紙記者、米国のコンサルタント会社アドバイザー、埼玉県芸術文化振興財団常務理事を経て2004年に独立。福岡県出身。

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