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スタートアップビジネスで最も重要な「当然の事」 実例で振り返る (3/4ページ)

 フェイスブックは「大学生向け」のサービスだった

 フェイスブックはまさにこの一例として挙げられます。フェイスブックは最初、世界を狙ったSNSではなく、あくまで大学生を対象にしたサービスとして生まれたため、当初は各大学の授業の一覧を確認できるサービスを展開していました。だからこそ大学生に深く愛され、多くの若者が長く使い続けてくれました。

 深く愛してもらうメリットは他にもあります。愛を獲得できれば、その顧客に長く使ってもらえるだけではなく、彼らからプロダクト体験へのフィードバックを得ることができます。一方、ほどほどに製品を好きな人たちは、フィードバックすらせず、静かに自分たちの製品から離れていってしまうだけです。

 初期の製品作りにおいて、顧客のフィードバックほど価値のあるものはありません。それを得るためにもまずは小さな市場で、顧客から深く愛されるプロダクト体験を作ってください。10人、そして100人といった、少数でも製品を愛してくれるユーザーが生まれてから、どうやってそれを広めるか考え始めても、決して遅くはありません。むしろそうしたユーザーがいない状況で広めていってしまうと、先述した「成熟前の規模拡大」という間違いを犯してしまい、スタートアップは潰れてしまいます。

 シンプルなものを早くローンチするのが成功の秘訣

 そして少人数に愛されるものを作るためには、とにかくシンプルなものを早くローンチ(リリース)することが重要になります。

 最初は少数の顧客をターゲットにすればよいので、皆に好かれるものを作る必要はありません。それに顧客が少なければ、製品に機能が足りない部分があっても自分たちで細かくサポートすることができます。

 だからこそ初めは、顧客に愛してもらえそうなメインとなる機能を、なるべくシンプルに提供することが重要です。リーンスタートアップの文脈では「Minimum Viable Product(実用最小限の製品)」、略してMVPと言われたりしますが、とにかく実用可能な最小のものを早くローンチし、顧客に使ってもらうことが、スタートアップにとっての成功の秘訣です。

 1時間で作ったレストラン仲介サービス

 Y Combinatorの卒業生であるDoorDashの例を見てみましょう。彼らは、既存のレストランの食事の注文を受けて、宅配する仲介サービスとして始まりました。

 この「既存のレストランの商品の配達」というアイデアを実行する場合、普通どう考えるでしょうか。まずは会社を作り、レストランと契約し、配送システムを作り上げてから、配達する人を雇って、と考える人も多いのではないかと思います。しかし彼らが選んだやり方はまったく異なります。

 彼らが行ったことは、PaloAltoDelivery.comという独自ドメインを取って、ネット上で見つけたスタンフォード大学周辺のレストランのメニューを集めたサイトを作り、そのメニューと一緒に自分たちの電話番号を書いただけでした。かかった時間は1時間程度だったそうです。

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