道標

強まる市場不安 円急伸に警戒を 米景気後退で利下げ強化も (1/2ページ)

 日本を含む世界の金融、資本市場が8月に入って急変したのは米中貿易戦争が突然激化したためだ。トランプ米大統領が表明した対中制裁関税第4弾が引き金になった。第4弾の対象品目は消費財が多く、関税が引き上げられれば価格上昇により、米国の個人消費に悪影響を及ぼしかねない。

 米連邦準備制度理事会(FRB)は7月31日、政策金利の引き下げを決めた。今後の連続的な利下げを否定したものの、米国景気は個人消費の底堅さもあって、失速のリスクが小さいとの見方は崩れなかった。

 しかし翌8月1日に表明された対中関税第4弾は、市場の楽観的な見方に疑問を投げかけた。「関税引き上げで堅調な消費が崩れ、利下げが遅れることで景気全体が失速するリスクもある」ということだ。景況感の急変が、そのまま市場の急変につながった。

 さらに中国人民銀行が人民元の対ドル相場を1ドル=7元の大台以下に下落することを許容(事実上誘導)した。米国は即座に中国を、貿易面で有利になるよう意図的に通貨を切り下げる「為替操作国」に認定した。一連の動きが市場の動揺を増幅した。米中が関税以外の手段を講じ始めたのは、両国ともに妥協の余地がないことを示す。

 米中の対立は単なる2カ国間の通商摩擦ではなく、安全保障や外交といった面を含む争いに発展している。米中交渉が経済合理性で打開できないレベルに達し、ゴールが見えなくなったことに市場は気づかされた。

 世界経済は現在、製造業を中心に減速傾向をたどっている。米中の関係悪化は生産活動をさらに冷え込ませるリスクがある。一方で世界経済が減速しつつも失速に至っていないのは、先進国を中心に個人消費が堅調に推移しているためだ。しかし生産活動への負の圧力が今後高まれば、雇用の悪化などを通じて、消費に悪影響が及ぶ。

 米中の通商交渉で妥協が期待できないのであれば、負の影響を回避する手段は各国・地域独自の景気対策になる。米国の場合、FRBの利下げに期待が集まる。最大の消費イベントとなるクリスマスセールスに向け、FRBは連続的な利下げを余儀なくされる可能性が出てきた。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus