講師のホンネ

日本地図と移動

 日頃、企業や自治体の講演や研修、地域の活性化や人材育成のお手伝いをしている。そのため、月の半分以上は東京以外にいる。そして、移動の手配は、ほぼ自分で行う。「そんなに毎日動いているのに、よく自分でやるね」という人もいる。実は、動いているからこそ、自分でやった方が確かなことも多い。もっとも、最近では、スマートフォンから飛行機も列車も予約できるし、移動しながらでもチケットの手配は可能。逆に、今でも部下にチケットの手配を任せている経営者は、一度、考えた方がよいかもしれない。「働き方改革」と言われている時代に、部下に余分な仕事を与えている恐れがある。

 22歳からタレントの移動ルートからチケットまでを手配してきたため、日本地図はかなり頭に入っている。一方、現場に行ったこともなく、土地勘のない人には、分からないことが山ほどある。例えば、鳥取県と島根県。隣同士だけれど、鳥取市から島根県の益田市への移動などは、場所によると一度、飛行機で東京まで戻ったほうが早かったりする。検索では、出てこないけれど、バスを使ったら泊まらなくても、安くてその日のうちに帰れたりする。

 また、直線とお金にこだわらなければ、別の場所で乗り継ぐと、意外と動けたりもする。熊本からの移動の場合は、福岡空港までレンタカーかバスで動くと簡単に東京に出て、そこから各地に行ける。そんな移動手段を新人や不慣れな人に求めても無理な話。それどころか10分で手配できるチケットの手配に、30分も1時間も費やすことになる。夜行電車に夜行バス、船を選択肢に入れると、もっと移動の幅は広がる。

 昭和の時代には、スマホの検索なんてなかった。会社には、分厚い時刻表があって、常にそれとにらめっこしていた。もっとも、学生時代から時刻表を片手に旅に出るのが好きだった。何よりも日本地図は面白い。暇があれば日本地図を見ながら、戦国時代を考えてみたり、江戸時代を考えてみたりする。「こんなところにこんな町があったんだ」と、まだまだ知らない場所があることに驚く。そして、「行ってみたいなぁ」と、思っていると引き寄せたのか、その地域の商工会から講演のオファーが来たりする。それも楽しい。

【プロフィル】大谷由里子

 おおたに・ゆりこ 奈良県生まれ。1985年、吉本興業入社。横山やすしのマネジャーを務め、宮川大助・花子などのタレントを次々と売り出した「伝説の女マネジャー」として知られる。2016年3月、法政大学大学院・政策創造研究科を修了。「笑い」を用いた人材育成法は、NHKスペシャルや日本経済新聞など多くのメディアで話題に。著書は35冊を数える。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus