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中国人に売却された「天皇家宿泊ホテル」の末路、老舗はどう読み間違ったのか (2/2ページ)

 命取りになった「経営方針の継続」

 2013年1月期と2014年1月期の決算は、いわば、経営難の最中に見えた、かすかな光だった。旗松亭の経営陣はその光を過大評価し、「もう大丈夫だ」という甘い見込みを持ってしまったのだ。かすかな光の手応えを、旗松亭の従業員がどれほど感じ取っていたかは、今となってはわからない。しかし、道半ばにして改革の手が緩み、元の経営方針に立ち戻ってしまうのは、企業が破綻へと向かう前兆の1つといえる。

 旗松亭においても、従来の経営方針を継続するという経営判断の誤りが命取りになった。2015年1月期の年収入高は約5億8200万円と再び減収に転じ、その対応が後手に回ったことから手元資金が枯渇。2016年1月末の支払い決済の見通しが立たなくなり、民事再生法の適用を申請するに至ったのである。

 「もう大丈夫」は大丈夫じゃない

 月が明けた2月1日、旗松亭の経営破綻を伝えるYahoo!ニュース配信の記事には、450件を超えるコメントが書き込まれていた。「時代の波に呑まれたんですかね」「皇族が宿泊した、ではもう食えない時代」--同情の声と辛らつな意見が交錯した。

 2月2日の債権者説明会では自主再建の方針を示したが、最終的には断念。旗松亭の事業は、2017年1月24日、香港で観光業などを営む中国人実業家へと譲渡された。これにより社長は辞任、従業員は全員、継続雇用となり、創業から続く伝統は守られるという方針の下で再スタートを切ることになった。

 旗松亭の倒産要因は、2期にわたってこれまでのような減収を免れたことを、経営陣が「底打ち」と見なし、従来の経営方針に戻る判断を下したことだ。「もう大丈夫」--辛酸をなめた後で、ついついこのような判断を下したくなるのはすべての経営者に共通の心理だろうが、そんな甘い見込みが、ときには本当に取り組むべき課題を見えなくし、命取りになるのである。

帝国データバンク 情報部
 1900年創業の民間信用調査会社。国内最大の企業情報データベースを保有。帝国データバンク情報部は、中小企業の倒産が相次いだ1964年、大蔵省銀行局からの倒産情報提供に応じるかたちで創設。情報誌「帝国ニュース」の発行、「全国企業倒産集計」などを発表している。 主著に『なぜ倒産』(日経BP社)『御社の寿命』(中央公論新社)『あの会社はこうして潰れた』(日経BP社)などがある。

 (帝国データバンク 情報部)(PRESIDENT Online)

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