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原発誘致の鍵握る地元有力者 地域社会の論理にのまれる電力 (1/2ページ)

 関西電力の社長を含む役員ら20人が、高浜原発が立地する福井県高浜町の元助役から総額3億2000万円相当の金品を受け取っていたことが大きな問題になっている。(北村俊郎・元日本原子力発電幹部)

 1960年代、高浜町に限らず原発立地の候補となった全国の自治体が原発を誘致しようと考えたが、一番困難な課題は住民の同意だった。その解決の鍵になったのが地元の有力者だ。

 町会議員や役場幹部OB、行政区長に加え、商工会や漁業組合、農協の幹部、さらに元学校長や各種団体の代表-。住民に影響力を持つ有力者への説得が行われ、彼らが誘致の方向でまとまり、反対住民の説得に一肌脱いでくれたところは誘致に成功した。

 運転開始後も有力者に求めたものは、事故トラブルへの冷静な反応や新増設、改造工事への理解である。

 有力者には、電力会社からそれなりの「お返し」があった。それは国への財政支援の陳情応援、選挙や政治活動に対する支援、物品やサービス委託の発注、関連工事発注、町の新規事業やスポーツ文化活動への寄付、補償や利権の付与、就職斡旋(あっせん)の受け入れ-。

 地元では、電力会社に顔が利き、仕事や寄付を取ってきてくれる人が頼られる。彼ら地元有力者は電力会社の中で誰が実力者なのかを見極め、昔から知っている会長や相談役のところへ行く。

 原発を動かす現場幹部はそのことを知っているから、下手なことはできない。高浜町の元助役も原発誘致の時から亡くなるまで有力者の地位を保っていた。東京電力福島第1原発事故の後、経営がより苦しくなった関電にとって、元助役は以前にも増して必要な人物だったようだ。

 原発による発電事業を営む電力会社と地域社会は、ある意味、極めて対照的だ。

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