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食品ロス削減法施行、外食や小売りの取り組み広がる

 まだ食べられる食品を廃棄する「食品ロス」を減らそうとの動きが小売りや外食を中心に広がっている。今月から削減推進法が施行されたことに加え、消費者や投資家からも取り組みに対する視線が強まる。政府は今年度中に食品ロス削減の基本方針を策定する予定で、責務の拡大が見込まれる企業側も積極姿勢を打ち出している。

 「最近は持ち帰りを断る来店客の割合が減ってきた気がします」。東京都品川区のアメリカンレストラン「TGIフライデーズ五反田店」の清水幸子店長は機運の変化を感じ取る。

 肉料理を中心にボリュームが売りの同店では、食べやすいハーフサイズを展開するほか、食べきれなかった料理の持ち帰りを来店客に勧めてきたが、最近は来店客の方から「持ち帰れますか?」と聞かれることも増えたという。

 環境省や農林水産省などによると、日本国内では年間643万トン(平成28年度推計)の食品ロスが出ている。国民1人が茶碗(ちゃわん)1杯のごはんを毎日捨てている計算だ。日本では食品衛生上の懸念に加え、賞味期間の3分の1を超えた食品が小売りに納品されない商慣習が背景にあり、食品ロス全体のうち352万トンは事業者から出ているという。

 潮目が変わったのはここ数年だ。節分で販売される「恵方巻き」が大量廃棄される画像が流れたことなどをきっかけに、食品ロスへの関心が高まった。今月施行された「食品ロス削減推進法」でも「事業者は食品ロスの削減に関する施策に協力するよう努める」と明記され、企業側の対応が加速してきた。

 また食品ロス削減は国連の持続可能な開発目標(SDGs)でも目標の一つに設定され、事業者の背中を押す。日本総合研究所創発戦略センターの各務友規マネジャーは「投資家や消費者が企業を評価する基準となっている」と話す。

 外食業界では食べ残しや廃棄を極力減らす取り組みを進める。モスフードサービスは、食材を必要な家庭や施設へと橋渡しする「フードバンク」に対し、使い切れない食材を寄付する。

 小売業界は商慣習の見直しに動く。セブン&アイ・ホールディングスやイオングループなどはメーカーや卸売業者などと連携し、納品期限を賞味期間の3分の1から2分の1に緩和。ローソンは消費期限が近い商品をポイントで実質値引きする実証実験を8月まで実施して効果を検証中だ。

 課題は消費者の意識だ。消費者庁の意識調査によると、食品ロス問題について「知っている」との回答が約4分の3を占める一方、スーパーなどの商品棚の手前に並ぶ賞味期限の近い商品を購入することがあるかという質問については、過半数が「ほとんどない」「全くない」と答えた。

 みずほ総合研究所の堀千珠主任研究員は「食品ロス削減は食費節約にもつながる。消費者が削減のメリットに気付いて、食品ロスを積極的に減らしていくことが重要だ」と強調する。(佐久間修志)

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