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地方滅ぼす「顧客見ない病」 “やれるムダ行政”が苦しめる (3/3ページ)

 行政の向き合うべきは「規制強化」

 民間がやれることを行政がやる必要はなく、行政は行政にしかできないことと向き合うのが本筋です。今回のような都市交通問題で、行政のできる最も有効な打ち手は「規制強化」です。

 具体的に言えば、奈良公園周辺を含めた中心部への一般車両乗り入れを制限し、制限区域周辺に集合駐車場を作ることを検討すべきです。これは欧州において都市中心部や観光地に自動車乗り入れ制限をする際によく行われる政策です。

 私が最も驚いたのは、ドイツの有力自動車メーカー・メルセデスやポルシェの本社のある「自動車の町」シュツットガルトでさえ、かつて自動車が行き交っていた中心部は今や一般車両立ち入り禁止へと変化し、その周辺に集合駐車場を備える方式を採用していたことです。

 歩き回る人が増加して路面店舗が繁盛したり、日々さまざまなマーケットが開催されたり、広い公園と道路に人々が集まる風景を見ることができます。最近ではニューヨークのど真ん中にあるブロードウェーでさえ片側車線がオープンカフェなどに転換し、通行量が大幅に伸びています。

 奈良の場合にも膨大な観光客が来る中心部への一般車両立ち入りを規制すれば、まとまった駐車場需要が生まれるため、必要な駐車場整備については民間資本を誘導することも可能になるでしょう。さらに中心部を多くの人が歩行する時間が長くなるため、消費にもプラスに働き、単に公園に行って帰るだけという動きも変わる可能性が高いです。

 顧客を民間と食い合うのは、あまりにもナンセンスだ

 そもそも奈良公園だけのために来る日帰り観光客が、本当に奈良に必要なのかという話です。予算は、滞在時間を伸ばすための制約を増やす、つまり宿泊客などの一人あたり観光消費額の高い顧客だけを呼び寄せることに費やすべきです。

 そういう意味では、バスターミナルを多額の税金で整備し、お金にならない顧客を呼び寄せ、さらには民間施設と駐車場事業で食い合うというのはナンセンスすぎるわけです。

 地方では民間のような事業を行政が行い、失敗することをくり返しています。背景には、規制強化などの法律や条例に関連することは利害関係者も多く、議会で新たなルールを通すのが難しいことが挙げられます。

 一方で、施設開発事業は予算をつければ比較的かんたんに実行できてしまうからどんどん進んでしまいます。

 言い換えれば「やるべきこと」ではなく「やれること」をやってしまった結果、行政にはなじみの薄い顧客調査や競争戦略が必要な領域に税金を費やし、成果を出せていないのです。

 行政は行政にしかできない仕事をするべきです。つまりは法律や条例によってできることが求められます。

木下 斉(きのした・ひとし) まちビジネス事業家
 1982年生まれ。高校在学中の2000年に全国商店街合同出資会社の社長に就任。05年早稲田大学政治経済学部卒業後、一橋大学大学院商学研究科修士課程へ進学。07年より全国各地でまち会社へ投資、経営を行う。09年全国のまち会社による事業連携・政策立案組織である一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立、代表理事就任。著書に「地元がヤバい…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門」(ダイヤモンド)、「福岡市が地方最強の都市になった理由」(PHP研究所)、「地方創生大全」(東洋経済新報社)、『稼ぐまちが地方を変える』(NHK出版新書)、『まちで闘う方法論』(学芸出版社)などがある。

 (まちビジネス事業家 木下 斉)(PRESIDENT Online)

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