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"世界初の株式会社"がオランダで誕生した背景

 会計500年の波乱万丈ストーリー

 会計には様々なルールがあるが、それがいつの時代になぜつくられたのか。例えば「減価償却」。これを初めて採用したのは、蒸気機関車の発明によって誕生した19世紀イギリスの鉄道会社だ。

 当時、リバプール・マンチェスター鉄道に投資した人はかなりの儲けを手にした。この成功に刺激を受け、イギリス各地で雨後の竹の子のように鉄道会社が設立され、株で「ひと儲けしたい」という株主も増えていった。しかし、鉄道会社の場合、初期投資に莫大な費用がかかるうえ、固定資産が多いため、特に創業当初は儲けを計上して株主に配当するのは容易ではない。

 そこでどうしたか。「彼らは『機関車は長期的に使用するものだから、長期的に費用計上するのが合理的である』という理屈をこしらえ、費用を平準化したのです」と田中靖浩氏は解説する。つまり、株主に安定的に配当するために新しい会計ルールをつくってしまったわけだ。

 「減価償却の登場は、500年に及ぶ会計史の中でもイタリアの簿記の誕生に匹敵するような重要なターニングポイントといえます。なぜなら減価償却によって会計上の儲けは収支から離れ、『利益』というかたちで計算されるようになったからです。これによって、現金主義会計(収入-支出=純収入)から発生主義会計(収益-費用=利益)へと移行したのです」

 絵画や音楽のイノベーションにも着目

 本書は経済史を振り返りながら会計の発展を解説しているのだが、田中氏は併せて絵画や音楽のイノベーションにも着目。経済史や会計史、絵画・音楽史がパラダイムシフトしている瞬間を描いているところに面白さがある。

 例えば「17世紀のオランダ」。商人たちは市場を発展させ、絵画までも「市場取引財」に変わっていった。市民が買い手になるにつれ、画家たちは教会の巨大な壁画ではなく、家に飾る小さな風景画や静物画を描くようになった。「この時代の“光の画家”と呼ばれるレンブラントの代表作は『夜警』ですが、街の警備にあたる男たちから頼まれて描いた集団肖像画です」。

 一方でオランダは、株式会社という革新的手法で見知らぬ人々(ストレンジャー株主)から巨額のお金を長期的に調達し、スペイン・ポルトガルが独占するインド航路の貿易を成功させた。そのためにつくられたのが世界初の株式会社、東インド会社だ。「ストレンジャー株主に対する儲けの報告(account for)が、会計(accounting)の語源です。資金を預かった経営者から、資金を提供した株主に向けて報告を行う--ここが会計のルーツなのです」。

 田中靖浩

 公認会計士

 田中靖浩公認会計士事務所所長。産業技術大学院大学客員教授。1963年生まれ。外資系コンサルティング会社などを経て現職。

 (河合 起季 撮影=大泉 裕)(PRESIDENT Online)

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