リーダーの視点 鶴田東洋彦が聞く

医療の伝統守りながら変革に挑む 日本医科大・弦間昭彦学長 (2/3ページ)

 「AIは画像を解析して診断情報を発信するのは得意だ。モニタリング現場でも活用が進んでいる。ナースステーションから離れた場所に入院している患者の様子をセンサーで観察する遠隔モニタリングをAIに任せることで、医師や看護師の負担を軽減できる。総合医療分野は人手が足りないのでAIをサポートシステムとしてうまく活用し、医師が最終判断する仕組みが重要だ。まさにAIとの協働が求められる」

 ICT使い学習支援

 --医科大学版テクノロジー革命にも挑んでいる

 「単科大学なのでAIが得意な人材には限りがある。一方で相手を選べるという強みもある。相手にとっても日本医科大の立ち位置が分かると連携しやすい。すでに東京理科大学や早稲田大学とは特別学事協定戦略を結び、ビッグデータやロボティクス、バイオメカニクスなどで共同研究に取り組んでいる」

 --学校教育にも変化を求めている

 「学生のやる気を引き出すためICT(情報通信技術)を活用した学習支援システムを取り入れている。システムから全講義のコンテンツ(教材)をダウンロードできるようにして講義の前後の予習、復習を行わなければならなくした。さらに成績優秀な上位層の学生は授業の出席を免除。eラーニングを使って学習しながら、その期間中は研究や留学に充てることもできる。ICT化は時間や空間から自由になるので、それを生かす。学生は試験に合格すればいい。一方で成績下位層にもeラーニングの活用を促している。医学は履修する科目が多く、落とすと留年につながりかねない。最も非効率であり、これを防ぐために『科目持ち上がり制度』を導入した」

 --学習環境の整備が進む

 「少人数グループで討議しながら授業を進めるスモールグループラーニング(SGL)にもICTを活用している。電子黒板に学習データが記録されるため、他グループの学習内容が分かり、学習成果を共有できる。全体のレベルアップにもつながる。AIによる学習教材づくりにも生かしたい」

 「東京理科大との連携の成果として『患者アンドロイド』を共同開発した。患者の代わりになってくれる模擬患者は医学教育で重要な役割を果たしているが、実技の共用試験が行われるようになり需要が増えているからだ。学生の診療に対する評価もばらつく。このためAIを組み込んだアンドロイド型ロボットを開発している」

 アンドロイドで実習

 --アンドロイドの役割が高まっていく

 「他のアンドロイドも利用して学生の臨床実習に生かしている。音声対話ができ、診療にあわせて表情や視線、うなずきなど感情を観察できるため、医師役の学生はあたかも本物の患者を診療している感覚になり緊張感を持って授業を受けることができる。臨床現場をビデオで撮影しており、SGLで他の学生も映像を見ながら討議するなどアクティブラーニングに活用している」

 --女性の学生比率が高いと聞く

 「18年入学の学生のうち女性は47%、19年は43%。明治時代に130人以上の女性医師が済生学舎から巣立った。その流れが今も続いており、医師志望の優秀な女性が、それも学力だけでなく、教育理念である愛と研究心を有する女性が日本医科大を受けてくれている」

 --これからの日本医科大が目指すことは

 「テクノロジーでどこまで効率化できるか、AI時代の治療は、といった課題はあるが、日本医科大の伝統、流れを受け継いでいくのは間違いない。一方で、人間は変わることを避けたがる。変革に飛び込むには勇気がいるが、教育を通じて体験すれば勇気も出てくる。若い学生を変革の現場に飛び込ませたい」

 高校まで文系志望 柳田邦男の本読み呼吸器科へ

 --医師の一家に生まれた

 「高校2年生のときまで文系志望で大学は法学部に進みたかった。しかし開業医の父親をみて『良心に従って仕事をして、それが喜ばれる。それはいい仕事に違いない』と感じ、方針を変えた。それで日本医科大に入学した。当時は今と違って完全に受け身の授業で、先生が教壇に立って一方的に話した。ただ授業にはゆとりがあり、ハンドボールと硬式テニスの両部に入って汗を流した」

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