メーカー

日産の内田新社長がにじませるルノーへの配慮、社内からは反発も

 日産の内田誠新社長は2日の会見で、仏ルノー、三菱自動車との企業連合の重要性を強調した一方、ルノー側への配慮をにじませるなど、今後の難しいかじ取りを予感させた。日産はカルロス・ゴーン被告の逮捕後に悪化したルノーとの関係修復だけでなく、事件によるイメージダウン、それらも影響しての業績不振などの問題に直面しており、新たな成長戦略を描けるかが問われる。

 「それは形にすぎない。各社のメリットになることが大事だ」。内田氏は、ルノーがこれまで求めてきた経営統合に関する質問に対して明言を避けた。統合案を否定するとルノー批判になりかねないことに配慮し、関係の修復を優先したとみられる。

 背景にはこの1年間のルノーとの不協和音がある。国境を越えた自動車大手同士の協業は難しく、ルノー・日産連合は珍しい成功例とされてきた。しかしこれは両社のトップを兼務し、“扇の要(かなめ)”だったゴーン被告の存在があったからこそで、逮捕後は両社の相互不信が噴出。日産株の約43%を保有し、資本関係で優位にあるルノーが統合を求めたり、人事に影響力を及ぼそうとしたりし、日産が反発する“暗闘”が繰り返された。

 新体制移行は、関係修復を目指す日産にとって絶好の機会。もともと内田氏が選ばれたのも、ルノーの意向があったようだ。本命視された関氏が社長に選ばれず、副COOに就いたのは、「資本関係の見直し意向を持っている関氏をルノー側が警戒したから」(関係者)とされる。だが、ルノーに過度の配慮をすれば関氏や、資本関係の対等な方向への見直しを望む社内の人材が内田氏に反発する可能性も否定できない。

 最大の課題は何と言っても令和2年3月期の営業利益が前期比でほぼ半減し、通期として4期連続の減益を見込む業績不振からの脱却だ。COOに就いたアシュワニ・グプタ氏は会見で、「固定費を削減し、優先順位をつけた投資を行う」などとしたが、「内田カラー」による業績改善に向けた具体策はまだ、見えない。(高橋寛次)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus