「泳ぐ宝石」とも呼ばれるニシキゴイ。国魚にしようと国会議員連盟が設立されたほどの人気ぶりだが、10月、ニシキゴイ発祥の地とされる新潟県小千谷市で、恒例の県錦鯉品評会が開催され、農林水産大臣賞などを選出した。日本でもトップレベルの品評会とあって、一般公開では1000人を超える人出でにぎわった。富裕層の外国人の間で人気が高まっており、この日も百万円単位の“買い物”をする姿が見られた。(池田証志)
753匹が一堂に
小千谷市桜町の市総合体育館コミュニティプラザで10月下旬に開かれた品評会は、今年で第59回を迎える。会場には、水色のビニールシートで囲われた巨大な円筒形の水槽が並ぶ。その数約200。県内の82業者が753匹を出品している。
白いゼッケンを付けた審査員たちが思い思いの水槽をのぞき込み、ニシキゴイの品定めをしている。
さまざまな色や模様のニシキゴイたちが優雅な姿で泳ぐ。審査基準は、体形、色彩、斑紋(はんもん)の3つが基本となる。ただし、ある養鯉(ようり)業者によると、「最後は品位」なのだそうだ。
「さすがに大きい」「これ、いいね」。審査員たちは手持ちのリストにメモを書き込んでいる。
30分ほどすると、全審査員25人が集合し、投票を開始。最高賞の農林水産大臣賞が選ばれる瞬間を前に、会場は緊迫した空気に包まれた。
「決選投票を行います」
長い沈黙を破って、大会関係者が宣言した。いずれのニシキゴイも過半数に達しなかったことから、伊佐養鯉場(小千谷市)が出品した紅白(白地に赤い斑紋)と大日養鯉場(同市)の昭和三色(紅白に黒斑紋が点在)の2匹による一騎打ちとなったのだ。
販売価格にも影響
大きな透明のポリ袋に入れられ、決選投票用の特別水槽に運ばれた2匹。紅白は体長90センチの迫力はもちろん、体格、色つやともにすばらしいのが素人目にも分かった。一方の昭和三色も88センチと大きさでは負けず劣らず。白地に橙、黒のエレガントな模様が美しい。
慎重に2匹を見定める審査員ら。改めて投票した結果、紅白に軍配が上がり、続いて行われた投票で、大臣賞に次ぐ栄誉である水産庁長官賞に昭和三色が選ばれた。
約100カ所の野池で錦鯉を育てているという伊佐養鯉場の伊佐光徳社長は「ずっと大事に抱えていた錦鯉です。野池から上げた瞬間、『これはいける』と久しぶりの手応えを感じました」と目を細めた。同養鯉場では毎年、数百万から1千数百万匹の稚魚が生まれ、翌年には150匹に絞り込んで野池で育てる。その中で今年、選び抜かれた1匹だという。
この後、審査員は7班に分かれ、体長15センチ未満から80センチ超えまでの15部ごとの入賞などを決めた。各賞の受賞者には賞状やトロフィーなどのほか、商品券が贈られるが、それ以上に大きいのは、養鯉業者としての格だ。ある養鯉業の男性は「品評会の受賞歴は、ニシキゴイの販売価格に影響する」と話す。