日本の議論

「データ集積次の飛躍」「消費者不安払拭を」 巨大IT企業の情報収集は (1/3ページ)

 「プラットフォーマー」と呼ばれる巨大IT企業は、使い勝手の良いサービスで利用者を増やす一方、個人情報を独り占めしているとの批判が根強い。ただ、規制強化は企業の成長阻害の要因にもなりかねず、慎重な判断が求められている。個人情報収集の課題をニッセイ基礎研究所の中村洋介主任研究員とヤフーの中谷昇執行役員に聞いた。

 中村洋介氏「まず消費者の不安払拭」

 --デジタル分野で個人情報の在り方が取り沙汰されたのはなぜか

 「一つは、大手就職サイトがサイト内で得たデータを分析し、学生の内定辞退率に応じたスコアを算出し、契約企業に販売・提供していたことが問題になった。平成25年に鉄道会社が乗降駅や生年月、性別などのデータを外部企業に販売したが、利用者に対し事前に十分な説明がなく、批判や不安視する声が上がって中止に追い込まれたことも個人情報の利活用に向けた議論が進むきっかけになった」

 --鉄道会社のデータ販売は何が問題だったのか

 「提供した外部企業から情報が流出したり、個人の他の情報と合わせて何かが分かってしまったりといった懸念があるためだ。その後、個人を特定できないよう加工した情報は本人の同意がなくても第三者に提供可能となったが、データの外部販売で、他の企業はデータ活用に二の足を踏んだ」

 --企業側の意識はどうあるべきか

 「国の成長戦略、生産性、経済成長を上げていくという意味でも、データ活用は鍵になっている。人工知能(AI)は、データの量が少ないと価値が存分に発揮できない。ただ、保有する大量の個人情報を活用し、インターネット検索や会員制交流サイト(SNS)での広告を展開することに対し『薄気味悪い』『気持ち悪い』との声が増えている。信用スコアもそうだが、人の人生を決めてしまうところまで個人情報が使われると、拒否反応も出てくる。消費者の不安を取り除いた上で、価値あるデータを集める仕組みが、今まで以上に問われる」

 --個人情報の規制は、民間企業による自主規制ルールで進めるべきか、政府がもっと介入すべきか

 「政府が政策を打ち出すのであれば、過度な規制強化はイノベーション(技術革新)を阻害すると主張する経団連などとの調整が必要だ。何があったら駄目なのかをはっきり線引きしないと、企業活動が萎縮してしまうからで、はっきりしたルール作りは必要だ。一方で企業側が自らを律したルールを作っていくことは当然求められる。難しい論点を含むが、個人情報保護とデータの有効活用のバランスを取った制度設計、運用が求められる」

 --規制が進むことで、新規企業が参入しづらくなるとの指摘もある

 「個人情報をビジネスとする動きは、ここ数年、ベンチャー企業で出ている。規制をきつくすれば、体力のない企業は新規参入しづらい」

(飯田耕司)

 なかむら・ようすけ 昭和55年、埼玉県出身。平成15年、日本生命保険入社。年金運用、株式投資、ベンチャー・キャピタリスト業務などを経て、29年からニッセイ基礎研究所。専門分野は日本経済、ベンチャー。

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