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「500ドットコム」で注目浴びる中国の振興くじ 焦点はネット販売解禁 (1/2ページ)

 日本でカジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業を展開するため、衆院議員の秋元司容疑者らに賄賂を渡した事件で、中国企業「500ドットコム」がにわかに注目を浴びている。500ドットコムは、2001年に設立され、中国初のオンラインくじ購入モデルを開発、13年にはニューヨーク証券取引所に上場している。世界135カ国に6000万人以上の登録ユーザーを持つ。(GBL研究所理事・宮田正樹)

 規制で大幅赤字招く

 マージャンなど「賭けごと文化」の発祥の地というイメージがある中国だが、共産主義の下では賭けごとは禁じられている。唯一国家に認められている賭けごとはいわゆる宝くじだけだ。中国の宝くじは、1987年に認可された「福祉くじ」と94年に認可された「スポーツくじ」の2つ。スポーツくじは、「スポーツ産業の発展」「オリンピック競技計画」「生涯スポーツ計画」の財源として発行されるもので、中国国民の人気を博している。

 合法的ギャンブルである宝くじに対する国民の購入意欲は高く、ブラジルでサッカーワールドカップ(W杯)が開催された2014年には、福祉くじが2060億元(現在の為替レートで約3兆2000億円)、スポーツくじが1764億元の合計3824億元の売り上げを記録している。これをなぞるように、500ドットコムの収入は14年度に5億8000万元を記録した。だが、翌15年度は9955万元と急落。16年度は1092万元、そして19年度第3四半期は976万元にとどまる。経費を差し引くと大幅赤字だ。

 この急激な業績悪化の原因は、15年に中国政府が宝くじのネット販売を規制したことにある。規制は、違法賭博、違法くじのネット販売や、ネット販売業者によるノミ行為などの不法行為を取り締まる目的で打ち出されたものであり、宝くじのオンライン購入は禁止された。

 500ドットコムは、民間業者として唯一政府の認可を得たとうたっていたが、その実態は当局の「黙認」。取り締まり対象になることを恐れ、自主的に宝くじのネット販売から手を引いた。ネット販売の手数料収入が主たる収益源であったビジネスモデルが崩壊したわけである。

 その後、中国の大手IT企業・清華紫光集団(国立大学である清華大学が経営する半導体関連企業グループ)が1億2400万ドルを出資。資金力に窮することがなくなった500ドットコムは、17年にフランスや香港のカジノ会社を買収するなど、新たな収益源の開拓を進めている。日本のIR市場への参入を図ったのも、その動きの一環だった。日本参入にあたっては、「中国富裕層の集客力」「ギャンブル依存症対策を含むCRM(顧客関係管理)」「資金調達力」を強調していたのだが、CRMが「賄賂」に行き着くという皮肉な姿を見せつけている。

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