社説で経済を読む

ゴーン被告逃亡、求められる「出国管理の穴」の精査 (1/2ページ)

 特別背任罪などに問われ、保釈中だった日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告がプライベートジェットで中東・レバノンに逃亡した。米紙ウォールストリート・ジャーナルによれば、ゴーン被告は音響機器を入れる箱に隠れ、出国検査をすり抜けていたという。(産経新聞客員論説委員・五十嵐徹)

 「スパイ映画もどき」

 1月4日付の東京社説はそう書いたが、不法出国にあたっては、プロの支援チームが動いた疑いが濃厚である。

 昨年末の逃亡後、初めてとなる記者会見を8日、レバノンで行ったゴーン被告。一連の疑惑は日産幹部と検察による「共謀」だと決めつけた上で、「それが見えていなかったのは日本国民だけだ」と指摘した。

 ショック隠せぬ司法

 一時は「企業再建のカリスマ」とあがめられもした日本で暗転した立場は、自らにどう映っているのか。発言にはいらだちもうかがえた。

 逃走の経路や手段などについては徹底して口をつぐんだが、保釈中の逃亡については「自分と家族を守るためには、これ以外の選択肢はなかった」「裁きから逃れたのではなく、不公正と政治的迫害から逃れた」と正当化した。

 日本の司法制度についても「推定有罪が前提で、基本的人権が否定されている」と厳しい口調で批判した。

 ゴーン被告は2018年11月から昨年1月までに計3回、逮捕・起訴され、3月にいったん保釈されたものの、4月に4回目の逮捕があり、起訴後に再び保釈された。

 没収が決まった15億円という巨額の保釈金に加え、海外渡航の禁止、住居玄関への監視カメラ設置、パソコンや携帯電話の利用制限など、弁護側が示した条件を裁判所が認めた。当時、弁護団は「逃亡はあり得ないシステムを提示した」と自賛していたほどだ。

 その中での逃走劇。司法当局に与えたショックは大きい。

 ゴーン会見を受けて森雅子法相は9日の記者会見で「逃亡を正当化するために、わが国の法制度について誤った事実を殊更に喧伝(けんでん)するもので、到底看過できない」と語った。国際機関などと連携して日本での刑事手続きが適正に行われるよう、できる限りの措置を講じる考えも改めて確認した。

 9日付産経主張(社説)も「ゴーン被告が何を主張しようが、不正な手段で出国し、日本の法を破ったことは疑いようがない。その行動は卑劣であり、一切、弁明の余地はない」と指弾した。

 しかし、海外メディアにはゴーン被告の主張に理解を示す論調も目につく。

 往年のハリウッド名画「風と共に去りぬ」に引っ掛けて、「Ghosn with the wind」と逃亡劇を報じたブルームバーグ通信は「日産と日本の地検は、従うことに慣れていない、裕福で権力がある人物に地獄をくぐらせた」と述べた。

 結果的に逃亡を許した保釈条件緩和の流れについては、日本メディアにも「逃げ得を許してはならない」(5日付読売)、「保釈を認めたのが誤りだ」(3日付産経)など厳しい見方もあるが、おおむね認定基準の強化には反対の論調が目立った。

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