2020 成長への展望

アジアヘルスケア強化で中間層開拓 丸紅社長・柿木真澄さん

 --世界景気の見通しは

 「米中摩擦も含め見通しはつけにくい。ただ、投資は様子見と言っている間に約1年が経過し、企業が投資決断する動きがでてくると期待している。不謹慎だが、こういう時期こそ、総合商社は真価を発揮できる。中国からモノの動きが滞ればそれを埋める動きが東南アジア諸国連合(ASEAN)に広がる。ベトナムは人口1億人に迫る勢いで、輸出も増えている。子会社を通じ、今年、段ボール原紙の工場が稼働するが、いいタイミングだったと思う」

 --2019年度から3年間で9000億円の投資を掲げた

 「従来は財務体質改善を最優先してきたが、投資規律の考えも根付き、昨年7月以降は順調に投資案件がでてきている。丸紅が手がけてこなかった領域、Eスポーツ関連にも出資した。シンガポールの政府系投資会社が立ち上げた新技術の投資ファンドに参画し、バルト三国のエストニアに続き北欧のフィンランドにもスタートアップ発掘の拠点を設ける計画だ」

 --昨年、次世代事業開発本部を立ち上げた

 「約100人のうち約60人が営業に関わり、80件のプロジェクトが動いている。従来は商社機能の一つが仲介機能だったが、一気に消費者にアクセスできる技術開発が進み、中抜きされるとの危機感は高い。今後は、消費者により近いところのビジネスが増えてくる。この本部の事業はすぐに収益化できないかもしれないが、四半期ごとの活動を社内にオープンにし、他の本部にも刺激を与え、新たな動きを期待している」

 --ヘルスケアにも注力している

 「沿線に病院を持つロシア鉄道などと共同で、極東のハバロフスクに健康診断・予防医療サービスを提供するセンターを設置する。ロシア人の健康寿命の伸長は8項目の経済協力事業の一環でもあり、日本流の健康診断を広げたい。アジアの中間層向けのヘルスケア事業も本格展開したい。アジアの病院事業への参画を検討し、医療関係のビジネスのやり方や商社らしい事業展開を探っていく」

 --新たな事業展開に向けた人事戦略は

 「求められる人材が変わってきており、採用やこれまでの評価方法などを抜本的に見直そうと経営で議論している。4月以降に段階的に導入していきたい。社員の能力も把握した上で適材適所の人員配置を進める。勤務時間の15%を新規事業発掘などにあてるルールの導入や地銀やコンサルティング会社への出向を通じて視野を広げ、成長してもらいたい」

【プロフィル】柿木真澄

 かきのき・ますみ 東大卒、1980年丸紅入社。専務執行役員電力・プラントグループCEO、副社長執行役員などを経て、2019年4月から現職。鹿児島県出身。

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