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百貨店、4年連続6兆円割れ 昨年の売上高発表、天候不順や消費増税響く

 日本百貨店協会が22日に発表した昨年の全国百貨店売上高は5兆7547億円となり4年連続で6兆円を割り込んだ。既存店ベースでは前年比1.4%減と2年連続のマイナス。天候不順や昨年10月の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減などが理由だが、背景には若年層の百貨店離れや地方経済低迷といった構造的要因も見え隠れしており、今後も業界の地盤沈下が続く可能性がある。

 昨年の商品別売上高は、化粧品や美術・宝飾・貴金属などを含む雑貨が2.7%増と堅調に推移した一方、構成比率の高い衣料品が、天候不順により夏物や冬物の販売が振るわず4.0%減、食料品が1.1%減、家庭用品も2.0%減と軒並み減少した。

 「中国の景気減速や規制強化などによるインバウンド需要の反転、消費税増税などマイナス要因が多かった」。前年割れの理由について、同協会の山崎茂樹専務理事はこう総括した上、「減少傾向はずっと続いている」と今回の売り上げ減少が一過性のものではないとの認識を示した。

 念頭にあるのは、業界を取り巻く経営環境の厳しさだ。「インターネット通信販売に慣れた40代以下の消費者が百貨店と縁遠くなっただけでなく、業績を下支えしていた60代以上の顧客の買い控えも目立ってきた」。流通コンサルタント事業を手掛けるムガマエの岩崎剛幸社長は分析する。

 特にあおりを受けているのは少子高齢化などで商圏が縮む地方や郊外の百貨店だ。伊勢丹相模原店(相模原市)や山交百貨店(甲府市)など昨年だけで11店舗が閉店。今年以降もセブン&アイ・ホールディングスが傘下のそごう・西武の店舗を今年から来年にかけて5店舗を閉鎖。2店舗でも売り場面積を縮小する。

 客離れを食い止めようと百貨店各社は若者に人気のあるテナントの誘致やIT活用などで店舗への誘客を図る。20日に新装開業した高島屋東別館(大阪市)の核テナントは外資系ホテル。訪日外国人旅行者の利用で近隣にある高島屋大阪店(同)の誘客を狙う。

 だがてこ入れ効果は「大型店や改装効果が見込まれるところ」(同協会)に限られる。岩崎氏は「政府によるキャッシュレス決済のポイント還元制度が期限を迎える6月以降、地方や郊外の店舗は正念場だ」と指摘。「ターゲットを明確にした上で、地域に求められる店づくりをできるかが鍵になる」と強調する。(佐久間修志)

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