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“請負人”起用で再建加速 パイオニア存在感発揮できるか正念場

 パイオニアは昨年3月にアジア系投資ファンド、ベアリング・プライベート・エクイティ・アジアの完全子会社となったが、社長はその後も生え抜きの森谷氏が務めていた。約50年ぶりの外部起用となる矢原氏へのバトンタッチを機に、名門再建の取り組みはさらに加速することになる。

 「社名の通りパイオニアスピリットがあり、技術力をベースに新しいものを生み出してきた」。矢原氏は会見で、パイオニアの潜在力を高く評価した。

 かつて同社は山水電気、トリオ(現JVCケンウッド)とともに「オーディオ御三家」と呼ばれ、スピーカーやステレオなどのAV(音響・映像)機器が人気を集めた。技術力も高く、レーザーディスク(LD)やDVDといった光ディスク機器の開発で先行。衛星利用測位システム(GPS)を搭載したカーナビを世界で初めて商品化したのも同社だった。

 しかし、その後、巨額の資金を投じたプラズマテレビ事業の育成に失敗。AV事業やDJ機器事業を売却して車載機器に特化したものの、大量受注した自動車メーカー向けのカーナビ開発で費用が予想以上に膨らみ、巨額の損失を出したことで自力再建の道を断たれた。

 一時は7300億円弱に達した連結売上高は、平成30年3月期には約半分の約3600億円まで減少した。

 ベアリングの完全子会社となった後は、3000人規模のリストラに着手。一方で新たな収益源として、地図とデータを組み合わせたサービスや、自動運転などに使うセンサーの育成を急ぐ。

 もっとも、主戦場の国内カーナビ市場は成熟し、スマートフォンに利用者を奪われている。新たな収益源と期待する情報サービスには、成長性があるだけに米アップルや米グーグルといった巨大IT企業が力を入れており、パイオニアがどこまで存在感を発揮できるかは不透明だ。

 矢原氏は「企業再生にたずさわったキャリアを生かす」と話すが、そんな「再生請負人」にとっても名門復活は容易ではない。(井田通人)

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