2020 成長への展望

東京五輪で新機能備えたシューズを アシックス社長・広田康人さん

 --ラグビーワールドカップ(W杯)など、スポーツの大型イベントが続いている

 「ラグビーW杯は、日本代表の活躍で期待以上に盛り上がった。昨年はスポーツの力を実感できた1年だったと思う。アシックスはラグビーW杯でオーストラリア代表と南アフリカ代表をサポートした。両国のウエアを発売する際、発注の数が強気じゃないかと心配したが、あっという間に完売。『社長の予測は当たりませんね』と言われてしまった」

 --今年は東京五輪・パラリンピックが控える

 「トップアスリートへの製品の供給ももちろんだが、スポーツ愛好家やアスリートを目指す人たちもいる。この機会にアシックスの現時点での最高の技術を備えたシューズを幅広く提供していきたい。ランニングシューズでいえば、より少ないエネルギーで長く速く走るコンセプトの『ライドシリーズ』が出そろうほか、さらに若い世代を意識した新しい機能性のあるシリーズも発売し、本番までにタイプ別、走力別、価格別のフルラインアップで打ち出す」

 --デジタルツールも手掛けている

 「昨年11月にカナダの企業から買収したレース登録サイト『レースロースター』は非常に期待している。米国の5~10キロの初心者向け大会を中心に出場登録が簡単にできる。アシックスは『ランキーパー』というランニングアプリを持ち、大会までの練習プログラムも提案できる。こうした仕組みを『ランニングエコシステム』と呼んでいるが、直接的に商品を売り込むのではなく、まずはランナーとの接点を広げ、結果として商品を支持してもらえる環境をつくりたい」

 --国内は少子高齢化でスポーツ人口が減っている

 「2021年開催の『ワールドマスターズゲームズ2021関西』に期待している。17年のニュージーランド大会を視察したが、世界各地から選手が参加し家族総出で応援しながら、観光も楽しむスポーツツーリズムとして盛り上がっていた。日本でも働き盛りの世代がスポーツを楽しむきっかけになればスポーツ人口が増え、ビジネスにつながる。五輪という『見る』スポーツから『参加する』スポーツへとつながる非常に良い流れになっている」

 --東京五輪後の日本経済をどう見るか

 「不動産の需要が高まっているといわれるが、建設業界では東京五輪のために人繰りや資材が不足し、工程管理ができずにたまっているオーダーがあると聞く。日本経済は堅調に動くのではないか。機運を盛り上げ、日本の成長につなげることが企業人の役目だ」

【プロフィル】広田康人

 ひろた・やすひと 早大卒。1980年三菱商事入社。同社取締役常務執行役員などを経て、2018年1月からアシックス顧問、同3月から現職。愛知県出身。

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