KDDI(au)やソフトバンクなど通信業界の約30社が、NTTグループの共同調達を認める総務省の規制緩和方針に反対を表明することが26日、分かった。各社は共同で27日にも高市早苗総務相に反対の意見書を提出する。総務省は共同調達によるコスト低減で、先進技術への投資促進やデジタル変革などを促す考えだが、競合企業は公正な競争が阻害されることなどを懸念し、“巨大NTTの復活”に待ったをかける。
KDDIなどは意見書で、公正競争確保のために必要な議論の実施や、共同調達にかかる審査や認可基準を定めることを求め、これらが完了するまでは共同調達を開始しないように指導するよう要求する。
今春の第5世代(5G)移動通信システムの商用サービス開始を控え「新たな通信網整備などが進む時期だからこそ、公正競争が担保される環境が非常に重要になる」と関係者は語る。
旧電電公社が前身のNTTは1985年の民営化まで通信市場を独占し、関連機器メーカーに対して巨大な購買力を持っていた。このため、NTTドコモ、NTTデータ、NTTコミュニケーションズの3社が分社化される際は、競合がコストで太刀打ちできないとして、NTT持ち株会社とNTT東日本、NTT西日本との共同調達が行政上の方針で禁止されていた。
こうした中、総務省の有識者会議は昨年12月にまとめた将来の通信ルールづくりの最終答申に共同調達の容認を盛り込んだ。NTT持ち株会社とNTT東西を合わせた調達額のグループ全体に占める割合がかつての8割程度から2割程度に下がるなど「資材調達を取り巻く環境が大きく変化し市場に与える影響は小さくなっている」としている。
一方、競合各社は警戒感を強める。NTTグループの通信機器の発注量が増えて価格交渉力が強まり、NTTグループがコストで有利になるだけでなく「NTT仕様が通信機器の事実上の標準になる可能性もある」(関係者)からだ。
有識者会議の最終答申では「公正競争を阻害しない範囲で認める」としながらも、「対象品目や規模など具体的な内容は何も示されていない」(関係者)。競合各社からは「ルール変更の際の根拠や影響などがほぼ議論されないまま、方向性だけが出ている」という不満の声も上がっている。