2020 成長への展望

豊田通商社長・貸谷伊知郎さん(60)

 ■技術革新でアフリカ発の新サービス

 --自動車業界大変革に対応した組織改革の進捗(しんちょく)は

 「次世代のモビリティー戦略はやるべき分野もみえてきた。例えばつながる車では、半導体供給や情報セキュリティー、データセンター運営に布石を打ち、ビッグデータ活用の検討も始めた。産業の垣根がなくなる中で、デジタル変革の動きを自動車以外の全社に広げたい。そのためには部門間の掛け合わせが大事で、4月にデジタル変革グループを部に格上げする。唯一無二の存在として、新技術で付加価値を追求する」

 --環境対応による電気自動車(EV)対応は

 「アルゼンチンのオラロス塩湖のリチウムの資源開発の増産で4、5年後に世界需要の12%程度を安定供給できる体制とし、福島県でリチウム電池正極材向け炭酸リチウム工場も立ち上げる。リチウムの価格は下がっているが、将来の需要拡大に先手を打つ」

 --アフリカの事業展開は

 「ナイジェリアやアンゴラなどの資源国も回復途上で、非資源国のコートジボワールやセネガルの好調な消費も取り込む。自国で生産する車には愛着もわくだけに、ケニアやエジプトで組み立て生産の車種を増やし、消費に貢献したい」

 --アフリカ発の新サービスも相次ぐ

 「アフリカは規制が比較的緩やかで、カエル跳びのように技術革新による新サービスが起きている。海外で経験を積んだ人たちが新技術と資金をもって帰国し、社会課題解決に貢献する動きが経済の起爆剤になりつつある。出資した米ジップラインは、ルワンダで血液製剤やワクチンをドローンで輸送する。車であれば数時間の輸送時間が約30分に短縮でき(人命救助の)切実なニーズに対応した。ガーナに続くタンザニアやケニアなどへの横展開、グループ傘下の薬の販売網との相乗効果も検討したい。アフリカのスタートアップに特化した投資ファンドは意思決定の手続きを早め、機敏に対応する」

 --環境重視が経営課題になっている

 「火力から再生可能エネルギーへのシフトを進めたい。グループの風力発電会社、ユーラスエナジーホールディングスと、エジプトに風力発電所を完工し、他国にも展開する。企業がどこからエネルギーを調達したかも評価される時代だ。企業向けに再生可能エネルギーを含めたエネルギーマネジメントを提案する」

 --人材をどう育てるか

 「昨年、新規事業の創出に向け企業内ベンチャーを開始した。社内起業家を育てたい。新事業提案が起こる風土が、持続的に成長するドライバーになる」

                   ◇

【プロフィル】貸谷伊知郎

 かしたに・いちろう 同志社大卒。1983年豊田通商入社。常務執行役員、専務執行役員などを経て、2018年4月から現職。京都府出身。

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