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春闘 新共闘軸は「最低賃金底上げ」

 今年の春闘交渉で、各産業別労働組合で企業内や業界内の「最低賃金引き上げ」を共闘軸とする動きが目立ってきた。長年の主要指標である「ベースアップ」(ベア)のみでは、非正規雇用なども含めた全ての労働者の賃金引き上げにつながっていない反省があり、最低額の「底上げ、底支え」から賃上げ実感につなげたいとの狙いがみえる。

 「例年以上に取り組みを強化する。労組が組織されていない企業や非正規労働者も含め、全ての働く人々に底上げを波及させようということだ」

 ホンダグループの労組で構成する全国本田労働組合連合会の関係者は、16日の中央委員会で決定した春闘方針に、高卒初任給にあたる「企業内最低賃金」の労使協定化推進の文言を盛り込んだ意味を解説する。

 日産労連は昨年まで16万円としていた企業内最低賃金の統一要求額を、上部団体の自動車総連方針に合わせ「16万4000円」に引き上げることを決定。「日産グループは業界内では中小の割合が高く、最低賃金協定未締結の組合も多いため、いっそう取り組む必要がある」と関係者は語る。全トヨタ労連も「16万4000円以上」と統一水準とすることを決めており、これで自動車大手3労連全てが「最賃引き上げ」を主要要求に掲げたことになる。

 自動車総連は今年初めて、春闘方針に「18歳で月額16万4000円以上」での企業内最賃労使協定化を盛り込んだ。昨年から金額提示をやめたベアは、年齢や勤続年数などにかかわらず基本給引き上げを一律に、統一要求で迫る効果はあるものの、もともとの企業体力による差が縮まりにくいほか、経済協力開発機構(OECD)統計で日本人の時間当たり賃金が過去20年で向上していないことが明らかになるなど、波及効果に限界もみえている。

 これに対し各企業内の最低賃金が上がれば「自動車業界の人材確保につながり、業界内の働く仲間全体の賃金の底支えにもなる」(高倉明自動車総連会長)。地域別最低賃金より高い水準を設定することになっている、産業ごとに決定される法定の「特定最低賃金」について、経営側が廃止論を主張していることへの危機感や反発もある。

 主要製造業の5つの産業別労組が加盟する全日本金属産業労働組合協議会(金属労協)が21日に東京都内で開いた会合では、自動車総連だけでなく電機連合など全ての産別が、最低賃金引き上げに向けた検討を行っていると明らかにしており、動きは広まりそうだ。(今村義丈)

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