高論卓説

どうした近頃の日本の若者 従順に従わず、不合理に対して物申す“特権”生かせ

 近頃日本の若者が元気なく、おまけに学力も相対的に落ちているといわれているのが気になる。経済協力開発機構(OECD)の世界学力調査では読解力で15位、スイスの国際経営開発研究所(IMD)の世界人材ランキング調査では35位だ。つまり、日本には他国に比べ世界で通用する若い人が少ないといわれているのだ。

 国際的に通用する人材とは、すなわち、日本人としてのアイデンティティーを持ち、自分の意思や意見を明確に日本語と英語で伝えることができる。できれば、旺盛な知的好奇心と遊び心があれば世界のどこでもやっていけると思う。英語だけが得意ではNGだ。

 一方、日本人のビジネスマンが海外で大勢働いているではないかとの見方もあるが、彼らのほとんどは、かつての筆者と同様、日本企業の海外駐在員、つまり日本の会社員であり個人として国際的に通用するわけではない。世界中には本人と会社と働き場所、それぞれ3つの国籍が違う環境で働くビジネスマンは大勢いる。日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告が良い例だ。

 一方、最近日本国内の企業で働くインドやベトナム出身の技術者の姿を多く目にするようになった。彼らは政府が導入する低賃金の技能実習生とは別の高度な技術を取得した博士号やMBA保有の熟練労働者であり、30歳で年収1000万円超えがごろごろいる。日本のインテリ大卒の初任給は全員横並びで年300万円弱。これは過去10年間ほとんど変わっていない。問題はこの「横並び」である。

 ではなぜ日本には国際的に通用する人材が少ないのか。「勉強ができなくてもいい、元気があればわんぱくでもいい」ならまだ良いが、勉強もできない、元気もない、わんぱくでもないのが現状だ。

 筆者は大学で講義も受け持っているが、学生はいい子ばかりで居眠りする者も、おしゃべりする者もいない。が、質問する学生も少ない。ある大学で講義終了後に「質問は」と言ったら、ぱっと4、5人からすぐ手が挙がった。ここはすごいと思ったら全員が中国、台湾、韓国からの留学生だった。まさか「日本人学生は質問がないのですか」などというわけにいかないので、壇上で途方にくれたことがある。

 われわれは子供の頃から独創性より協調性に重点を置かれて教育されてきた。子供はみな違う、それぞれの個性を伸ばすのが教育だとお題目は唱えながらも、結果として均質的な人材を大量生産するのが今の日本の教育システムだ。他人と違うことは価値ではなく、リスクであると今の学生は思っている。だから彼らはみんなで同じ背広を着て、個性を消し、大勢で会社に押しかけ、マニュアル通りの就活をする。この国では年功序列、終身雇用、新卒一括採用というガラパコス型の経営スキームがまだ続いている。

 学生はそのシステムに何の疑問も持たずに羊のように従順に従っている。学生に不満はないのかと聞くと不満も不安もあるという。不満があるならなぜそれを声に出して叫ばないのか。世の中の不合理に対して物申すことは若者の特権だと思うのだが。今後、会社勤めをするにせよ、スタートアップを目指すにせよ、「起業家精神とハングリーさ」が成功の肝だ。これは大学では教えてくれない。

 この欄では、いつも「日本の若い衆はいい」と書いてきた。だが、今回は「日本の若い衆は根性ないね」。

【プロフィル】平松庚三

 ひらまつ・こうぞう 実業家。アメリカン大学卒。ソニーを経て、アメリカン・エキスプレス副社長、AOLジャパン社長、弥生社長、ライブドア社長などを歴任。2008年から小僧com社長。他にも各種企業の社外取締役など。北海道出身。

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