金融

新型肺炎で大荒れ…日銀の“弾切れ”見透かす市場 米長期金利低下でじわり円高

 新型コロナウイルスの感染拡大で大荒れとなった金融市場で、日本銀行の「弾切れ」観測が再び円高ドル安の一因となっている。相対的に安全な資産とされる米国債に資金が流入し米長期金利が過去最低を更新する中、日本の金利の動きは穏やかで日米の金利差縮小を招いた。日銀は市場の期待感をどうつなぎ止めるのか対応を求められそうだ。

 25日のニューヨーク外国為替市場は円を買ってドルを売る動きが優勢で、一時1ドル=109円89銭まで円高が進んだ。長期金利の指標となる米10年債の利回りが一時1.307%と約3年7カ月ぶりに過去最低を更新。一方、マイナス圏の日本の長期金利は変動幅が小さく、金利差が縮小し利回りの良いドルで資産を運用する動きが鈍った。

 先週は日本経済の先行き不透明感から円売りが加速する局面もあったが、米国も新型肺炎の影響を受け、安全資産としての円が再び見直された形だ。米国で感染が広がれば米金利が急落して金利差縮小が進み、円高が加速する恐れもある。

 米国債に買いが集まる中で日本国債の動きが鈍いのは、投資家が日銀は利下げに動かないと見切ったためだ。金利がマイナスの10年債は満期になれば損失が出る。それでも日本国債を買うのは一層の金利低下(価格は上昇)で転売益を出すためで、利下げが見込めないなら購入動機は薄れる。

 日銀の黒田東彦総裁は新型肺炎の拡大を受け「必要があれば躊躇(ちゅうちょ)なく追加的な措置を講じる」と表明している。ただ、以前から繰り返してきたこの言葉は「口先緩和」との見方が定着。金融機関の収益力悪化など副作用を考えれば、日銀が持つ追加緩和のカードは少ない。市場関係者からは「景気回復が後ずれすれば、政府が躊躇なく追加経済対策を講じるだろう」と期待する声も出ている。(田辺裕晶)

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