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焼け石に水、マスク難民絶えず 政府支援も生産量増加に時間…花粉も不足に拍車

 新型コロナウイルスの感染拡大により、マスクの品不足が続いている。マスクメーカーは24時間態勢でフル生産を続け生産量を通常の2、3倍に拡大しているほか、政府の補助金を受け設備投資に乗り出す動きも出てきた。ただ、ドラッグストアなどの店頭では商品を求め列に並ぶ「マスク難民」の姿が絶えない。メーカー側も先行きの見通しは立たず、3月中に品不足を解消できるかは不透明だ。

 「需要が通常の5~7倍に膨れ上がっている。各社が懸命に増産しているが、正直言って“焼け石に水”の状況だ」

 マスクメーカーなど115社が加盟する全国マスク工業会の高橋紳哉専務理事は、そうため息をつく。

 工業会によると、メーカー在庫は年初時点で約11億枚あったが、1月には底を突き、現在も改善していないという。直近では花粉飛散の真っただ中ということもあり、供給不足に拍車がかかりそうだ。

 マスク不足の解消を目指す政府は、3月の供給量を1月の約2倍となる6億枚以上に増やす方針を表明しており、設備投資を検討する3社に補助金の支給を決めた。大衆薬大手の興和は製造ラインを新設し、3月第2週に生産・供給を始める計画だ。中国でマスクを生産しているXINS(神奈川県厚木市)は国内生産を検討中で、導入設備の能力は24時間稼働の場合で月280万枚に達する。

 マスクや関連部材を手掛けるメーカーには資金力に乏しい中小企業が少なくなく、補助金支給が決まった3社以外にも検討されている案件があるようだ。

 もっとも、供給量を実際に2倍に増やすのはかなりハードルが高い。仮にメーカーが投資を決断しても、実際に生産量が増えるのは数カ月以上先になるからだ。しかも、日本国内で流通するマスクの約7割は中国をはじめとする海外で生産されており、新型肺炎による流通網の混乱などで輸入量は戻りきっていない。

 品不足の解消は果たしていつになるのか。経済産業省と厚生労働省は2月26日に開設したホームページ(https://www.meti.go.jp/covid-19/mask.html)で輸入を含む供給が増えつつある状況を伝えている。とはいえ、ある大手メーカーの担当者に見通しを尋ねると、「こちらが聞きたいくらいだ」と困惑気味の返事が戻ってきた。(井田通人)

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