経済インサイド

逆風が吹く「石炭火力」、HV車とダブる環境問題への“現実的な解”

 二酸化炭素(CO2)を多く排出する石炭火力発電をめぐって、日本を批判する声が高まっている。だが、資源に乏しく、原発依存ができない日本は、高効率の石炭火力でCO2排出を減らす方法が「現実的な解」と判断しており、現在、日本の電気の3割超が石炭火力となっている。この構図、日本のお家芸ともいわれたハイブリッド車(HV)の世界戦略でのつまずきと似通う点も多い。果たして、日本の主張が理解される日がくるのだろうか。

 2月14日の会見で、北陸電力の金井豊社長は、日本の電力事情について、「日本は、天然ガスを輸入する際、液化して、日本で再びガスに戻す作業が必要で、当然、ガスの輸入コストは高くなる。再生可能エネルギーも適地が少ない。安定して、安く供給するには石炭火力発電は一定程度必要だ」と述べた。電力の安定供給や経済性の観点からも石炭火力は当面維持するとの考えだ。

 加えて、エネルギー需要が急増するアジアの途上国を中心に、石炭火力のニーズがあることも指摘。石炭火力が“CO2排出の諸悪の根源”と批判する欧州とは事情が異なることも説明した。

 日本としては、石炭火力発電に使う、タービンを最新モデルに変えたり、バイオマスの比率を高めることで、なんとか石炭火力を使いながらCO2排出を減らしていく考えで、このような高効率の石炭火力発電を東南アジアに輸出し、世界的なCO2排出を減らすことで環境に貢献するといった戦略を描いている。政府のインフラ輸出戦略の中にも、発展途上国での石炭火力発電所建設支援の実施を明記。国内での石炭利用や海外援助を続ける姿勢を打ち出している。

 ただ、この構図。世界戦略でつまずいた、「ガソリンエンジン」と「電気モーター」を組み合わせたHVの歴史と似通っている。

 トヨタ自動車は、二酸化炭素や窒素化合物といった有害排出物の量を抑えようと、世界に先駆けHVシステムを開発し、エコカーにおける地位を世界的に不動のものにするはずだった。しかし、有害排出物が一切出ないと強調する電気自動車(EV)にエコカーの座を取って代わられた。

 特に中国は、エコカーに対し、補助金を出すなど導入に積極的だ。トヨタ自動車などは、EVが長距離走行が可能になるまでの期間、燃費効率に優れるHVを普及させることこそが、環境問題の「現実的な解」として、補助金の対象車にHVを含むことを中国政府に働きかけた。

 しかし、中国政府が2012年から始めた新エネルギー車(NEV)政策の対象となったのは、電気自動車(EV)とプラグインハイブリット(PHV)のみで、HVはNEV政策の優遇対象から外された。世界最大の自動車市場の中国でHVを普及させて、世界展開を拡大させたいトヨタの戦略は大きくつまずき、ホンダも含めて、世界市場で両社のHVは根付いていない。

 ただ、ここにきて、中国では、政府によるエコカーへの販売補助金が従来比で5割程度減額されてから、需要が振るわなくなっている。中国政府は、HV車も対象に加える補助拡大へと方向転換する見通しとなるなど、結局、「理想論」から「現実論」に方向転換しようとしている。

 石炭火力は、ドイツ、フランス、イタリア、英国が廃止を表明しているほか、金融機関や援助機関の中にも、石炭火力に関する投資をやめる動きが広がるなど逆風が吹くが、時間をかけて理解を求めるほかない。石炭火力への批判が高まる中で、「現実的な解」としての利用がどこまで受け入れられるか、正念場を迎えている。(経済本部 飯田耕司)

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